Interview
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オープン4か月で千人が来場! “自分本位”がまわりも幸せに。 人を引き寄せるシェアハウス【後編】
Webプランナー、『ギルドハウス十日町』運営
西村治久さん
オープン4カ月で千人もの人が訪れた『ギルドハウス十日町』。【後編】では、そんな場所を作り出した張本人の西村さんに“心地のよい場作りのコツ”を伺いました。また、3年間、全国のコワーキングスペースやゲストハウスなどを巡り、新しい時代の暮らし方、働き方を自身の目で見て肌身で感じた経験から感じた、これからの幸せな暮らしについて聞いてみました。
場を作る上で心がけていること
「私が、ギルドハウス十日町のようなコミュニティの場を作る上で心がけてることが3つあります。
まずはコンセプト。何のコンセプトもないと単なるシェアハウス。
これじゃ人は集まらない。単に家賃が安い場所を求めるだけの人しか来ない。
例えば猫好きというコンセプトのシェアハウスにしたら、猫好きが集まるわけですよ。皆話が合うし、猫の話で盛り上がる。さらに住んでなくても猫好きがやって来る。
猫好きが集まるコミュニティがシェアハウスの中に出来てくる。そこで餌のやり方とか、トリミングの仕方とかイベントもできる。
ただのシェアハウスだと、そんなことは出来ない。
でも東京だと、猫好きのシェアハウスなんていっぱいあるかもしれない。
山奥の限界集落というとんがった場所だとコンセプトが際立ってくる。
じゃ猫好き古民家シェアハウスを作りましたっていうと、さらにとんがった活動に見える。
メディアが、こんな山奥に猫好きの古民家シェアハウスがあるらしいと取り上げてくれるようになるし。
みんなの興味を引く事が出来る。」
↑東京で初めてコワーキングスペースを作った佐谷 恭が創めたシャルソン(ソーシャル・マラソン)を西村さんが主催して十日町で開催した様子。
↑地元のテレビ局からの取材も。
↑雑誌『ソコトコ』でも特集されて、巷で話題のパーリー建築のメンバーも2015年10月1日まで滞在していまいた。2014年に広島県尾道市のゲストハウスで西村さんと出会い、この古民家を“パーリー”する約束をして、『ギルドハウス十日町』のリノベーションを実現!また新たな場所へ!
次に、大切なのは適度な距離感。住人が家族みたいな近すぎる関係になってしまうとトラブルが起きやすくなる。
着かず離れず、でもお互い支え合える仲間の関係っていうか。
お互いのプライバシーに干渉しすぎないっていうか。私はここの管理人ですが、住人やゲストが盛り上がっている時はその場にはいない。
あえて、ちょっと縁側に引っ込んでiPadつついたり、アニメ見たり、小説読んだりしてる。
それは住人やゲスト達の自発性を重要視していて、彼らがコミュニケーションして自発的に何か生み出そうと行動に出るのに任せる。普段の生活でも、ここに関わる人達の自発性を尊重するため、適度な距離感てのが管理人と住人の間に必要だし。
こういう空間は、皆でとか、一致団結してでやるよりも、何も無いゆとりの中で、何かしないと自分はこのままじゃいけないって気付かせて、いろんな人達との交流の中で、こういうのやってみようかな、こういうのに関ってみようかなって、自発性を出させるのが大切なのかなって。
3つめは本音と本気と思いやり。いいコミュニティには、この3つが必ずある。
本音で本気で話せて、思いやりをもって。彼こういう事がやりたいんだな、じゃあ自分はこういう事ができるからお手伝いしてみようって思わせるような空気だったり。
例えば、実は仕事が欲しくて来たのに、積極的に言えずに遠回しな言い方をするようなのは良くない。仕事が欲しいなら、実は自分はこういう事をしてるけど、仕事がないって本気で話したら、回りもどんどんアドバイスを与えていって、そこから何か生まれるような。
時には思いやりを持って叱咤激励するこもある。相手を中傷するんじゃなくて思いやりで。
そういう空気感がコミュニティとして一番いい。」
これからは都市より地方へパワーをシフト
「ギルドハウス十日町は、幸先のいい滑り出しができたので、しばらくこのコンセプトでやっていきたいと思っています。
ただ時代の変化には柔軟に対応していきたい。
時代がいくら変わっても、この場所のような生き方、働き方ってなくならないだろうから。例え住み開きとかシェアハウスとかゲストハウスっていう最近出てきたワードが廃れて時代遅れになったとしても、多分それぞれのやり方は残ると思う。
そんな時に柔軟に対応できる場作りってのは意識しています。
まず古民家ってのは時代を経ても変わらない価値観を持っている。
こじゃれたビルをしゃれた感じにリフォームしてできた空間だと古くなったら、汚らしくなっちゃうし。
でも、古民家は違う。古くなればなるほど、味がでるし価値が上がる。
将来を見据えた時に、ギルドハウス十日町のこの形は結構いいのかなと思っています。」
2015年9月19日に開催された『月見音楽祭』。地元内外、たくさんのお客さんが訪れ、大盛況だったとか。
「近々、新潟の胎内市に二つめのギルドハウスをオープンする準備をしていて。
十日町からかなり北のほう。人口3万人ぐらいの中山間地域で海もあってパラグライダーとかも楽しめる自然豊かな場所なんですけど。
私の活動に興味を持ってくれた方が、大家さんを紹介してくれて。
元々シェアハウスに興味があったらしく、フットワークが軽くて柔軟な考えをお持ちで、私の活動をインターネットなどで理解してくださり、地元のためになると賛同してくれて。
胎内市でシェアハウスを望んでいるメンバーと準備中です。そこを立ち上げるのが私のお目下のプロジェクト。
新潟市だと人口80万人もいて、日本海側最大の政令指定都市。既にシェアハウスがある程度出来てきていて、ほっといても増えるでしょう。
なので新潟市以外の地域に作っていきたい。山奥の限界集落にこういう古民家シェアハウスを作って、これだけの人が集まったっていう実績が出来たから、新潟市や地方都市でない所でも可能性はあるなと実感して。
都市でなく、田舎にパワーをシフトしていきたい。
また香川県小豆島などで他の仲間がギルドハウスを運営し始めるので、そういった地域ともつながって。点と点をつないで活動を広げていけたら。
とは言え、同時に地方都市や都会ともつながりつつというのは大切だと思いますけど。」
これからの幸せな暮らし方のヒント
「これからの幸せな暮らし方は自分本位がいいと思う。自分本位っていうと、利己的とか我がままとか悪いイメージのほうが強いけど、私はそうは思わない。
まずは自分が幸せにならないと、まわりを幸せにできないと思います。
戦後、世の中、利益至上主義で急成長をとげてきた。何も無いところから日本全体が急成長するため、会社を大きくするために自分を殺して会社のために働いて。
利益を追求しなければいけないから、どんどん仕事が増えていって、時間が奪われていって、ゆとりのない生活が蔓延しちゃって。ある種の社会問題で。
そうなってくると自分がなくなっちゃう。私が実際そうだったけど。
なのでもっと自分本位に考えて 自分がどう生きられたら、楽しいのかなっていうことに重点をおいて。私の場合は、こういうコミュニティを作ったわけです。
で、自分本位で、自分がだらだらしたい、楽しくしたいから、わがままで作った場のはずなのに。いろんな人が出入りするようになって楽しんでくれる。
利己的なものが利他的になってる。この生き方ってのが一番自然体なのかなって思うんです。」
「自分本意で生きて、それがまわりの生き方と共感し合えた時に、まわりの人も幸せになれる、喜んでもらえるっていうのが、これから楽しいんじゃないかなと。
わがままで作った場所ですけど、今9人も住人がいて、さらにそこにゲストもやってきて毎日楽しく過ごさせてもらっています。
自分は44歳ですけど、これから50歳60歳と歳をとっていく時に、一人でいたら寂しいし、孤独死とか最悪じゃないですか!
でもここにいれば、誰かがいてくれて楽しく過ごせる。
たくさんある生き方の中で自分はこういう生き方を選んだ。
それに共感してくれる人同士がここに集まって、お互いそれぞれが自分の働き方、生き方を見つけて、それぞれが繋がって。住人同士だけでなく、ゲスト同士もつながって。
お互い旅した時に、その人の家に行ったら、ああいらっしゃい、久しぶりみたいな。日本全国どこでも、そんなつながりが広がって生きていけたら。
より多くの人に私と同じような旅を経験していただいて、世界を広げてもらって、そこから自分の生き方、働き方ってのを見つけ出して欲しいと思います。そのための拠点として我々のギルドハウス十日町のような場所が日本中、世界中にあるので、そこをたどってみてはと思います。」
自分の好きをつきつめたら、自分の暮らし方、働き方につながるという素晴らしい実例を体現している西村さん。
早く隠居生活をしたいとおっしゃてましたが、これから地域を元気にするキーパーソンとしてさらにお忙しくなりそうです。
Profile
Webプランナー、『ギルドハウス十日町』運営
西村治久さん
Webプランナー、『ギルドハウス十日町』運営
西村治久さん
1971年生まれ、埼玉県出身。新潟県十日町市在住。iPadひとつで全国を旅するノマドワーカー型Webプランナー。コワーキングスペース、シェアハウス、ゲストハウス等のプロデューサーとしても活動中。住み開きの古民家シェアハウス『ギルドハウス十日町』運営。世界的な起業家コミュニティのStartup Weekendから生まれ全国27都道府県45エリアに広まっている、まちの支えあいを増やすアプリ「まちかどギルド」CEO&Founder。