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Interview

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オープン4か月で千人が来場! “自分本位”がまわりも幸せに。 人を引き寄せるシェアハウス【前編】

Webプランナー、『ギルドハウス十日町』運営
西村治久さん

築百年以上の古民家をセルフリノベーションし、住まいを交流の場として開放する“住み開き”のスタイルをとりながら、様々な職種の人達が協働するコワーキングスペース、旅人が訪れるゲストハウス的な機能をあわせ持つ新しいコンセプトのシェアハウスとして2015年5月にオープンした『ギルドハウス十日町』。
多様な人や情報が集まり仲間や仕事が見つかる場所、交流や支え合いから地域の困りごとの解決を導き出す場所として、オープン以来、4カ月で千人を超す方々が訪れるという偉業を成し遂げました。
ちなみにギルドとは、中世ヨーロッパで商工業者の間で相互扶助を目的として結成された組合組織。その寄合い所がギルドハウスと呼ばれたことになぞらえてネーミングされたそうです。
決して交通の便の良くない(むしろ悪い)山奥の限界集落に、なぜ人々が集うのか?そんな魅力的な場所をプロデュースし、管理人を務める西村治久さんに『ギルドハウス十日町』の魅力を、【前編】はオープンまでのいきさつを中心にお聞きしました。

Web、インターネット業界へのきっかけは
小6の時に出会った
ソフトバンク発行のパソコン雑誌

「シェアハウスを始めるいきさつを話すと、小学校六年生ぐらいの時に一般向けのパソコンが流通し始め。

その頃、ソフトバンクが発行しているパソコン雑誌を毎月買ってて。雑誌を片手にプログラミングしながらゲーム作ったりして遊んでた。

子どもの頃からソフトバンクに入りたくて(笑)。当時、全国で2校しかなかった経営情報学部を卒業してソフトバンクに入って。

'90年代前半、ソフトバンクって消費者金融ですか?なんて言われて。孫社長とコンビニに買出しに行ったり(笑)。そんな時代。

Windows95が出たインターネットの黎明期。その頃は、パソコン雑誌の編集を担当して、メールの送り方とか、パソコンの使い方とかの記事を書いて。

本当に忙しくて毎晩徹夜が当たり前で。だけど楽しくて。

そんな業界の第一線での仕事を経て、30歳を過ぎ、縁あって新潟市に移住して、地元ベンチャーのWeb製作会社に転職したんですね。私を含め従業員3名。

Web製作、デスクワーク、プログラム、デザインワーク、プランニングなんでもやって、7年勤めて20人以上の会社まで成長して。

Web・インターネット業界で17年間過ごし、40歳を迎えました。」

40歳で一念発起!
Webの進化が働き方を変えた

「4年前の2011年、自分を見つめ直す機会があって。

こんなハードワークを40過ぎて続けていけるのか?と考えるようになって。さらに、その年に東日本大震災が起こって。

一方でスティーブ・ジョブスさんのおかげでスマートフォンが発達して、iPadが出てきて、クラウドってシステムも登場してきて、アプリ製作の事業が個人で成り立つような状況が整ってきたり。

facebookやTwitterといったソーシャルメディアの発達で個人で情報を発信したり、物やお金やサービスをシェアして成り立つシェアリングエコノミーの考え方も出てきたり。

地域社会の課題を解決するために様々な立場の人が協力し合って仕事をしていくソーシャルビジネスの機運も高まったりした背景があって。

個人でもやれば何か出来るんじゃないか?と思うようになってきて。それで会社を辞め、それまでの会社の付き合いをゼロにリセットして。

自分一人で生きていく力を身につけようと2011年にWebプランナーとしてフリーランスになったんです。」
「Webプランナーって、定義はいろいろあるかと思いますが、私の場合は話すだけ。

Webサイト作りたいんですとか、インターネットでこういうプロモーションしたいんですっていう時に企画を考えてあげる立場でやっていこうと。

例えば、企画が通った時、製作は知り合いのフリーランスの人にお願いすればいいし。

そんなWebプランナー業にシフトし、仕事は話すだけでよくなって、iPadだけでパソコンを持ち歩く必要もなくなって。

身動きがとれやすくなって、いわゆるノマドワーカー的なワークスタイルにシフトしました。

場所とか時間を選ばずに、そこら辺のカフェで身軽に仕事が出来る。

でも、カフェで仕事をしてると孤独になってきちゃって。会社の時は同僚もいたし仲間もいたし。一人でやってたら仕事がつまんなくなっちゃって。」

コワーキングスペースとの出会い

「そんな時にtwitterでアメリカ発祥の働き方のスタイルで、コワーキングスペースってのが東京には何軒かあるらしいっていう情報を得て。

一日5百円とか千円でスペースを借りられて、パーテーションとか仕切りがないオープンスペースで。

様々な職種の人と話しができて、そこからビジネスの話も生まれたり、いろんなアイディアがあふれたり。

そのコワーキングスペースの働き方に衝撃を受けて、これは面白い、新潟にもあるのかなと調べたらなかったんで、じゃあ自分で作ってみようと。

いろんな経緯があって、新潟県に初めてオープンするコワーキングスペースをプロデュースしたのが2012年の5月。

ノマドワーカーとして東京と新潟を行ったり来たりしながら。」
「新潟のコワーキングスペースにはいろんな人が集まって、自分のコミュニティも広がり、知り合った人からの仕事が増えたり、イベントの企画とか仕事の幅も広がって。

企業からの委託を待ってなくても自分で営業をかけなくても仕事が回っていくようになって。そこにいるだけで、いろんな人と知り合えて、自然発生的に仕事が生まれていく。

プランナーだからいろんなアイディアを出さなければならないのだけれど、いろんな人が集まるから、そこからアイディアも溜まっていって。すごく面白い流れが出来て自然体でいい働き方だなと。

こんなコワーキングスペースが他の地域にも出来つつあるという情報を得て、お隣の長野県に行ってみたんですよ。長野県上田市にあるハナラボって所で。

3日間ぐらいいたのかな。

NPOや行政のキーパーソンがいて。話を聞いたり、その方々の活動を見せてもらったり。

とても面白くて。そこで他の場所の情報をいただいて、そこからコワーキングスペースを巡る旅がスタートして。名古屋に行って、奈良、京都、大坂、神戸、岡山…。

その時は43日間、一度も帰らず、ずっと旅していました。本当にチープなお金のない旅だったんですけど。」

価値観を180度変えた
3年間のプライスレスな旅

「その中での出会いが本当に面白くて。

まずゲストハウスってものに巡りあって。安い値段で素泊まり出来て、なんだったら2段ベッドで皆で寝て。

旅人同士が交流できる素敵な宿で。海外の人とも片言の英語で交流できる機会もあって。

ある時、お金がなくて、オーナーに正直に、お金がないけど面白いから、まだここにいたいって言ったら、この場所の事をTwitterやfacebookで発信してくれたら宿代いらないよって言ってくれて。2週間ぐらい泊まらせていただいて。

ある場所でイベントやコワーキングスペースを企画する機会があって、地元の新聞に掲載されて。

それを見た人が自分の地元にもコワーキングスペースを作りたいので見に来てくれませんかって、そのまま車で連れて行かれて。

国産牛の美味しいすき焼きをご馳走になったりして。

お金を持っていないのにすごい楽しいプライスレスな旅ができて。

いくらお金があっても得られないような旅が出来て。」

↑プライスレスな旅の途中の1枚。瀬戸大橋にて。

↑3年間の旅で出会って仲良くなった人にメッセージを書き込んでもらった愛読書『つながりの仕事術』。常に持ち歩いていたそう。

「それで価値観が180度変わっちゃった。

それまでは、いい車に乗って、いい部屋に住んで、いい生活をするために収入を上げようと必死に働いてきた。

でも最低限稼げれば、お金がなくても楽しく過ごしていけるんだ、面白い人に出会ったり、面白い活動を作り出せるんだって事を我が身で実体験して。

気づいたら、そんな旅を3年間続けて。

ちょくちょく新潟に帰りながら、北は北海道から南は沖縄まで。まだ行ってない都道府県もあるんですけど。」

思い描いた自分の理想の場
ギルドハウス十日町を実現

「3年間、旅を続けるうちに、だんだん頭の中に自分の場を持ちたいって思いが膨れ上がってきて。

どんな自分の場を作ろうかと。コワーキングスペースや、ゲストハウスや様々な形の交流の場を見てきたので。

その中で“住み開き”という言葉に行き当たって。自分の住まいを解放するアプローチもあるんだと。

わざわざ新しい物件を借りて、そこに通いながらコワーキングスペースを営業するとかじゃなくて、自分の住んでいる場所を交流空間として開放して、そこでいろんなものを生み出していく。それは無理がなくていいなと。

朝起きて、そこが交流空間になっていて。毎晩、パーティを開催しているみたいに、人のつながりができて。

そこからいろんなアクションが生まれてくる。そんな自分の住まいは理想的じゃないかなと。

旅の経験の中から自分の場のイメージが出来て、コンセプトが固まってきて。

場所は古民家にしよう。住み開きにしよう、商売っ気を出さずにゲストハウスじゃなくてシェアハウスにしようとか。

で、出来たのが正にこの住み開きの古民家シェアハウス。この古民家は築百年なんですけど。

古民家にしたのは、日本人が皆持ってる美意識がつまっている所だと思うから。

古民家に住んだ経験がなくても、誰もがどことなく懐かしい思いを感じて、質の高いコミュニケーションができる場所。

囲炉裏を囲むように初対面の人でも腹を割って話せる。人の気持ちをオープンにする場の力が古民家にはある。外国からの古民家が好きで来てくださる方も多くて。

大家さんは70代のご年配の方で、シェアハウスという言葉自体は知らなかったものの、どんな家にしたいかをきちんと話したところ、空き家対策にも、地域にも良い事だと深く理解してくださり、好きにしていいよと応援してくれて!

そんな古民家のパワーもあってか、来た人は皆すぐ仲良くなって、一緒に今度、こんなことをやろう、あんなことやろう、また会おうって、あっという間に打ち解けられる。まるでゲストが住人のようにいられる落ち着き空間。」

↑ギルドハウス十日町の外観。

↑2階にはバーカウンター的なスペースも。
夜な夜なここから新たな出会いが生まれ、新たな面白いアイディアが生まれるとか。

↑ゲストで来てたヘアメークさんが近所のおばあちゃんの髪の毛をカット。

「なのでこんな山奥の限界集落なのにオープンしてまだ4ヶ月で千人以上もの人が来てくれたんですよ。

それだけ人を引き寄せる力がある。

まあ、わざわざこんな交通の不便な所まで来る時点でめちゃめちゃ分厚いフィルターを通ってやって来てくれるわけだから。

とんがった人ばかりが来る。場所と人の相乗効果で濃密な交流空間が形成されていくわけです。

例え都市でなくても、田舎でも面白い所であれば人は集まる。飲食店のマーケティングレベルだと交通の便の良し悪しとかで判断しちゃうけど。

この3年間旅して実感したことが自分の場でも実証できて本当に良かったです。」
3年間のプライスレスな旅の経験が凝縮されて出来上がったのが『ギルドハウス十日町』だったんですね!

次回、【後編】は、人が集う場作りの極意。そして、これからの幸せな暮らし方について西村さんのお考えをお聞きします。
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Webプランナー、『ギルドハウス十日町』運営

西村治久さん

Webプランナー、『ギルドハウス十日町』運営

西村治久さん

1971年生まれ、埼玉県出身。新潟県十日町市在住。iPadひとつで全国を旅するノマドワーカー型Webプランナー。コワーキングスペース、シェアハウス、ゲストハウス等のプロデューサーとしても活動中。住み開きの古民家シェアハウス『ギルドハウス十日町』運営。世界的な起業家コミュニティのStartup Weekendから生まれ全国27都道府県45エリアに広まっている、まちの支えあいを増やすアプリ「まちかどギルド」CEO&Founder。