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Interview

09

捨てられる動物達を生み出さない社会を目指して

NPO法人WAMPERS理事長
池田 豪さん

飼い主を失い行き場をなくした犬達の保護活動に取り組むNPO法人WAMPERSの理事長を勤める池田豪さん。犬の保護に携わるきっかけは、一匹の捨て犬を預ったことからとか。NPOを立ち上げ3年、新たに思うことも出て来たとか。
千葉県勝浦にある古民家を改修した自宅兼、犬の保護施設にお邪魔して、これからの活動に関してお伺いしてきました。

路頭に迷っていた
一匹の犬を預かることから
全てが始まって

「5年ぐらい前に、捨てられた一匹のピットブルを知り合いづてに保護したのがきっかけです。何も考えず俺飼うよって。だけど東京だと大型犬が飼える所は家賃が高いじゃないですか。

実家には犬4匹既にいて、もう無理だと。

それで、お店をやれば家賃払う感覚で犬と一緒にいながら仕事できるんじゃないと思って。

都内の南麻布でドッグカフェWAMPを始めて。」

まず犬がありきのお店だったんですか?

「そうですね。

お店の準備をしてる時に、たまたま近所のおばちゃんから、ピットブルを引き取れないかと相談を受けて。2匹を預かって、お店を始めたんですけど。

1番最初に引き取った犬が死んじゃったんですよ。

2匹で仲良くしてて、お客さんにもかわいがられていたので。1匹だとかわいそうだと思って、インターネットで色々調べると里親を募集しているピットブルがけっこういて。その外にも保護しなきゃいけない行き場がない犬がたくさんいて。殺処分って言う現実を知って。

ところがピットブルの場合は闘犬として有名で、闘犬をしている人の中には、里親募集で手に入れた犬に口輪をして自分の闘犬の練習相手させてる人もいるって話を聞いて。

それだったら、そんな所に行っちゃうよりは出来る限り1匹でも保護して、新しい飼い主さんを探すという事を始めたのが、お店始めて半年位で。」

「ピットブル犬は、大変凶暴犬とされて、欧米では飼育禁止の所があるぐらいで、ドッグランとかで遊ばせることが非常に厳しいよって言われ。ピットブルを飼う事は野獣を飼うと思えって。

だけど、運動させなきゃいけないし。どうしたらいいのかなと飼い方を考えるようになって。

シーザー・ミランというドッグトレーナーを取り上げた海外テレビ番組で、彼の育て方を見て、価値観がすごい変わって。

自分の欲求だけじゃなく、犬の本能に呼びかけるような形で一緒にいると、飼い主と犬の関係も良くなって。穏やかになって言う事を聞いてくれる、というような内容で。それに影響されて、今迄は、犬を飼う側の考え方でやりたいようにやってたんだけど、犬の立場から考えて接っするようになったら、すごくいい子になって。

飼い方ってすごく大事で。知らない人に吠えちゃったり、噛みついたりとか人間の接し方によってそうなってしまってる訳で。犬が本当に幸せで、いい状態だったら、いきなり噛みついたりとか警戒して吠える必要はないはずだから。

いろんなドッグランでそんな話をしてるうちに、犬の保護活動を応援してくださる人たちが増えて。同時に、保護して欲しいっていう依頼も増えてきた。
それで、小さいお店に犬が7匹ぐらいに増えちゃったんですよ。

シェルターを探そうと思ってたら、facebookで千葉の大多喜のハーブガーデンに犬の施設があるけど全然使われてないから話をしてみたら?って話が来て。貸していただける事になって。

それで店を辞めて千葉に移動する事になったんです。」

みんなの気持ちをいただいている
お金の見方も変わった

そこから本格的な保護活動に入ることになるんですね?

「都内でお店をやってるときから、犬の保護活動に対して、これでご飯食べさせてとか、住まわせる足しになればとか、寄付をしてくださる方がいらしたんですよね。

若い頃は、いい車に乗りたい、いい時計をしたい、いい家に住みたいみたいにお金は自分のために稼ぐものと思っていたけど、いくらあったって結局自分だけで誰も幸せにしないって思いに行き着いた。

犬の保護活動を始めて、自分が気持ちでやっている事に対して応援してくれる人がいる。気持ちとしてお金をいただいて、その分、みんなが出来ない事を俺がやる。そのサイクルがすごく健全に思えて、お金に対するわだかまりがクリアになって。

個人でやっていると寄付をしたいんですと言われた時に、池田豪の口座に振り込んでいただくことにすごく違和感があって。報告も開示もされて、ちゃんとお金が見えるようにNPO法人を立ち上げて。」

WAMPERSのリンクバナー。サイトより入手できます。

「大多喜に移れたことも、いろんな人の協力があって。

仕事というよりは、自分の活動があって、それを応援してくださる方がいて。皆がハッピーになれる形を作っていければなと思ってやりだした感じですかね。

その後、千葉の茂原でブリーダーさんが亡くなって、200匹もの犬が行き場を失う大事があって。結局残った10匹を僕らが保護して。それが割と千葉界隈、twitterやfacebook上で話題に上がって。それを見てボランティアに来てくださる方々が増えまして。そこから千葉で活動するのにも、いろんな人と出会えて活動しやすくなりましたね。

それで、ワンパーズの申請が通ったのが2012年の8月。東京でお店に遊びにきてくれてた友達とか、ドッグランで仲良くなった友達とか、そういった人たちと一緒に立ち上げて。今は妻と二人で動いていますが、今も変わらず東京メンバーもサポートしてくれています。」

保護活動の先に見えてきたもの
命の大切さを知る場を
作っていきたい

「犬の保護を始めて5年位経った中で、最初は保護。どうにか1匹でも。って考えがあったんですけど。

犬のブリーダーさんが、営業規模を縮小とかからブリーディングが終わった犬を保護して欲しいとか。個人的な都合で飼えなくなったからとか。野良犬を拾ったんだけど保護して欲しいとか。

それって結局、全部その人達の都合で僕らが世話をして。

その活動自体は大切であるし、1匹でも命を救うことはそれはそれでいいと思うんですけど。

手放す人がいなくならない限り、これはずっと続くって事を考えて。

どうやったら捨てる人たちを減らすことができるのかなってことを考えてて。

大人はある程度固まってて、新しい価値観に考え方を変えるのってたやすくはないのかなって。

大人達を啓蒙する事ももちろん大事だけど、もっと大事なのは未来をどう作っていくか。

今の子ども達が大人になった時に今ある社会の悪い所を、いかにして改善していくかを僕らが準備してあげられるか。それを伝えていける場所が出来たらいいなと考えて。

この古民家も築2百年位なんですけど、いろんな人に聞くと壊して新しいのを建てた方が安いよと言われたんですけど。壊す方が簡単だし、そっちの方が安いかもしれないけど、でも2百年ここにあるって結構すごいよなと思って。

この前亡くなったじいちゃんが96歳だったけど、じいさんもう一人分の歴史がここにあるんでしょと思うと、すごいよなと思って。

お金の事考えたら、今の当たり前だと、安いし壊して、新しいのを建てた方がいいってなる。

だけど、ここに2百年ある物なんだから、それを手直しして近所の方や子ども達が集うコミュニティスペースとして使って、物を大切にするって事を発信できた方が、全然いいよなと思って。

↑現在、改築中の古民家の中で、インタビューさせていただきました。


 

 

↑たくさんの方々のご協力を得て、目標額を達成できたクラウドファンディング。

「クラウドファンディングで皆さんから応援してもらって、少しずつ、そのお金で修復をさせてもらっているんですけど。

最初から見てる人は、おーすごいね、変わるんだね!と。

少しでもお金をかけずにいろんな人たちと一緒に直していければいいよなって。

休みの日に、子ども達が集まって、動物たちの世話したり、畑作ったりする価値のある事にここを使ってくれるようになればいいな。

今も都内の仲間夫婦の子ども達がボランティアで来てくれたり、近所の子が宿題ををやったりとか。

あと畑も一緒に作ってやったりしているんで。」

畑作りから収穫して食べるまでの体験を

「フーゲルカルチャー(パーマカルチャーの理論家ポール・ホイートンが提唱する植物の育ちにくい砂漠などでも水やりや肥料などの手入れが必要ない豊かな苗床の作り方)って、まだ日本の実例は少ないんですが、要は化学肥料とか、農薬を使わないで、手間をかけずに、水をやらずに、勝手に作物が育つ。

結局やってみて気づいたのが、小っちゃい山を作るイメージなのかなと。土と木と落ち葉がある所は植物が勝手に育つじゃないですか。

多分、毎年毎年、草刈りしようが生えてくるじゃないですか。本当の自然の強さみたいのができれば水なんか入れる必要ないし。

それなのに、それをいつまでに、どれだけの量を生産するかと思うと、なかなか難しく。

病気になるとか、連作が出来ないとかいうのも、人間が管理しようと思うからで。薬を入れたりする。」

↑豪さんが現在手掛けてるフーゲルカルチャーの畑の様子。

「それとは別に炭素循環農法っていう考え方でも作っていて。それも肥料、化学肥料とか農薬使わないで。ここは逆に地面を両サイド1メートル位掘るんですよ。

そこに竹とかで水の流れる場所を作って行くとここが程よく乾燥して。

乾燥する事によって微生物が生まれやすくなって、その微生物と作物との関係で育つ。雑草抜く位で何もしてないんですけど。

そこで今は唐辛子とトウモロコシ、茄子、トマトを作っています。

実際出来るのかを試すのは奥さんにやってもらってるんですけど(笑)。農業とか興味はないんですけどどうせ手間かけるならそっちの方が面白いじゃんって。

炭素循環のすごいところは収穫量が落ちないみたいですよ。

今は、自分たちが食べるだけですが十分出来るねって。

そういった畑作りから皆で一緒にやって、自分たちで作った健康で自然に近い形の野菜を食べられるような場所にするのも大事な事なのかなって。

好きに、調理場とか使って採った野菜を好きに食べられるみたいな場所を作りたいと思いますね。」

今の動物達の現状を
子ども達に知って欲しい

「ここを子ども達や親御さんとも、いろいろコミュニケーションが取れる場所にしたい。

実際に見せられる形を作りたいと思っていて。犬がいて、ヤギがいて、ニワトリがいて。これから他の動物も増やしていって。

あとは畑を作って。よく子ども達の体験授業でジャガイモ掘りとか、稲刈りをするけれど、結末だけやってもただのイベントで。僕も芋掘り行ったけど、芋掘って楽しかった、食べて美味しかったで終わってしまう。

大事なのは畑を作るところからで。畑を作るのは、こんなに大変。だけど、こうして野菜が出来るって事を全部体験させないとあまり意味がないのかなと思って。
そういう事も体験させる場所にしたい。

例えばニワトリは、養鶏場でだいたい2年位が廃鶏になるまで卵を産み続ける。

ちっちゃい小屋の中にずっと入れられて、卵産んで、おしまい。

それだと卵作る為だけの道具になっちゃってる。

子ども達は、それを知らないし、知らされてない。

今、商売としては仕方のないことかもしれないですけど。それが当たり前だから。

例えば子ども達がそういう現実を知って、大人になった時にどう鶏と接するか。

そうやって卵を産むビジネスをするのか、子どもの時に現実を知って大人になった時に考えると違うやり方がもっと出来るんじゃないかなと思って。

牛とかもずっと繋がれて、人工授精して、生まれたらすぐ別の所行ってその後出てくる乳は全て人間の所に行って。子牛は粉ミルク飲まされて。

それは今の世の中で当たり前だからしょうがないんですけど、もうちょっと考えられるんじゃないのって。

絶対小学校で牛乳飲まなきゃいけない訳じゃないかもしれないし、それを減らす事で必要以上の犠牲を作らない。

現実を伝えて知ったら、もしかしたら変わってくるのかなと思うし。

それ俺関係ないよって言う子どもはいないと思うんですよね。

だったらそういう子ども達に、別にそれが悪い事じゃないけど、自分が大人になった時にどうするか考えようって。

自分も考えたんで、子ども達に考えてもらって。きっとそうじゃない方がいいかなって思う子ども達が多いと思うから。

牛も廃牛になって殺しちゃうぐらいだったら、もらってきて、耕作放棄地の草を食べてくれれば、耕作放棄地も守って行けるし。出来る事がいっぱいあるのかなと思って。

そういうのを見せるだけでも、ちょっと違うかもしれないって思う人が一人でも増えていって、広がっていけば、きっと命だったり、物だったり、人間同士だったり、全てを大切に考える事が出来るのかなと思って。」

↑保護した犬のほかに飼っている動物達。

「とにかく命を大事にする、生き物を殺しちゃいけない、物を大事にする。

基本で習ってきたはずなんだけど、実際やってるの?っていうと結構やれてない世の中を作ってしまっているなと。

自分に子どもが出来て、子どもに胸張ってこうだろって言えるのかな?と思って。

人殺しは犯罪になるけど戦争は犯罪にならない。

負けた国は犯罪者にになる事も本当に正解かっていうと、心の中ではおかしいっていうのは皆分かってると思うんですよね。

じゃあ、おかしいからやらないって胸張って言える社会を作れれば。

犬捨てるのは、いいの?悪いの?いけない。じゃあやらない。

使える物なのに捨てちゃっていいの?使えるんだから使う。

当たり前じゃんみたいな。

そんな単純な事さえ出来れば、殺処分もゼロになるし、自分以外の相手が幸せになる事も幸せって思えれば、もしかしたら世界は簡単に幸せになるかと思うし。
それが難しい社会のシステムを大人が作ってしまっているから。

少しでも改善できる社会を作る為に、犬がいて、僕は保護活動をして。

犬1匹も大切だけど、結果的に何万匹、何十万匹って命が勝手に幸せになりましたって世界が理想だよなと思って。そこを目指してこれからを作っていこうかなと思ってます。」

ローカルで活動することの可能性

「自分ら夫婦は東京で生まれ育ってて。都会も田舎もお互い無い物ねだりだと思うんですけど。

自然が好き。だからこっちに来る。でも都会も好き。9時でも人が溢れかえる時間。

クリエイティブな仕事してる人だと、田舎に来て自分のライフスタイル自体がその人のブランドになるから。がんがん田舎に来て、自分でそのライフスタイルを作り上げて、それ自体が売りになるって言うのが1番のプロモーションだと思うので。

東京にいると会社のブランドとかそういったところでの仕事になっちゃうから。

そう言う意味で僕のワンパーズのサポートもしてくれている、大学の頃からの友達のカメラマンなんかにも、絶対こっちに来て生活したほうがいいよって言ってて。
自分である程度、家作ったりとか、小屋でもいいんだから。

その中で撮ってく写真とかも絶対変わってくるし、感じる物が絶対あるから。面白いよなって思うし。

僕の場合は千葉に来て、とにかく人とのコミュニケーションが豊かになって。

最初は地元の人に不安に思われるのは当たり前だと思います。だからコミュニケーションをしっかり取り、自分がどういう人間かを知ってもらおうとしましたね。地元の方々へはやはり挨拶です。

日々の挨拶をすることが一番大切だと思います。お祭りや集まりにも積極的に参加して。

今、近所の人、お店の人、皆が繋がっている人で。初めて会う人でもどっから来たんだって話から知り合いになれたり。

年配の方が多いので、自分達が来てみんなが元気になった!子ども達の声が聞こえて嬉しい!と言ってもらえるようになって、それが最高です。

頑張って活動していると、野菜持ってきてくださったり、米持ってきてくださったりとか。

それをこっちも何か作ってお返ししたりとか。なんかあったらお互い助け合える繫がりが出来てきてるってすごい感じるし。」

↑奥様の怜奈さんと一緒に。

「昔から考えてた事なんですけど、全部人が作った作り物の世界が東京であって。

元々、あったものってほとんどないと思うんですよね。

だけど、こっちに来て、自然を見ていると海もそうだし、山もそうだし。

人間が作った物じゃない自然の物って本当の物だから。

そういう物と接している事で、色々感じられる事があるのかな。

追っかけてる事が、本当は追っかけさせられてたのかもしれないし。

周りに影響されて、そうじゃないといけないんだと思ってしまって、都会にいたのかなと。

自分もそうじゃないといけないんだってそれを一生懸命追っかけてたけど。

そこは本当の物じゃないから。っていうので僕はこっちに来たのがすごい良かったなと思いますね。」

↑豪さんのインタビュー動画ダイジェストはこちらをご覧ください。

動物保護の根本をたどっていくと、我々の日々のあり方、考え方に行き着く。
誰もが、心の奥底では、気づいてる。だからこそ、豪さんの取り組みに自然と多くの方の共感と賛同が集まるのだろう。
豪さんがこれから作っていく場に人が集まり、そこから、次の世代の子ども達に(もちろん私達にも)生きていく上で本当に大切な情報が次々と発信されていくに違いありません。
豪さんと犬達、動物達との新しい場、子ども達へ伝える場が出来上がるのが楽しみです!

 
Profile

NPO法人WAMPERS理事長

池田 豪さん

NPO法人WAMPERS理事長

池田 豪さん

1975年生まれ。東京都目黒区出身。アメリカ独立リーグでプレー後、MLBで通訳、スカウトなどを務める。2012年に特定非営利活動法人WAMPERSを設立、理事長に就任。犬の保護活動を通じて、命やものの大切さを伝えている。