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コムデギャルソン、イオン経由桐生から世界へ!ファッション業の新しい形【後編】

株式会社フクル、株式会社Huggyhuggy 代表取締役 
木島 広さん

震災の年に起業という大変厳しい状況のなか、インターネットと自分のキャリアをかけあわせ、地方のメリットも活かし新規事業を地元桐生で事業をおこなう木島さん。
今、さらに次なる展開をお考えのよう。後編は、その構想についてインタビューしました。
ファッションで、地域だけでなく、日本全体も元気にするような希望に満ちた取り組みとは!?桐生発世界も夢じゃない!?

実家の縫製業、
東京での仕事、起業…。
すべてがつながる新事業!

今、お考えの新しい事業について教えてください。

「抱っこ紐の事業以外に立ち上げた事業のうち、パターンのダウンロードサービスなんですが、メンテナンスもせずに放置していた状態だったんですね。

特定の方々には、ある程度ニーズがあると思ってたんですが、現在3千人ぐらいになって。なんとか収益化を考えていたんですが、たまたま懇意にしていただいてる会社の社長さんから、桐生の機屋さんの倉庫に生地の在庫がいっぱいあると。それをどうにか処分したいんだけどっていう相談を受けまして。

で、パターンをダウンロードする人は必ず服を作るだろう、ミシン等を持っていて、自分で洋裁や、手芸の趣味をお持ちだろう。パターンの無料ダウンロードに格安の生地やファスナーやボタンを購入できれば非常に便利なサイトになるんじゃないかと思いまして。

事業計画を作って、様々なビジネスプランコンテストに出させていただいたのが去年。

群馬ベンチャーサミットと群馬イノベーションアワードでは入賞させていただいて、金融機関や投資家の方にも評価をいただいて。

ところがある方に、私がコムデギャルソン出身、イオンにいたこともある、地方の倉庫の在庫を使える状況もある、実家が縫製工場と、色んなリソースを持ってる中で、手芸と洋裁の人の為だけにこれを使うのは非常にマーケットが小さすぎると言われたんですね。

その投資家の方が、一番マーケットがでかい、ポテンシャルの大きな所に自分の持ってるリソースを投下すべきという話をされて。インターネットで欲しいデザインを探してきて、服の生地やデザインや色とかをピッピッピってスワイプして選んでって、スマホで体の写真を撮るとサイズが表示されて購入ボタン押したら自分の体型にフィットした服が買えるような世の中ってもう実現してもいいと思うんだけどねっていうような、ドラえもんのようなことをおっしゃって。

オーダーメードに近い形で服が気軽に買えるシステムができる条件がそろっているんじゃないのって言われたときに、ぞくぞくって鳥肌がたったんですよね。」
「私が最初に勤めた会社での経験からサンプル品、要は一点物を作るコストが頭に入ってる。パターンとデザインは自分で当然作れますし、あそこにいくらで出して、倉庫の生地はいくらで、それをお客様からいくらで注文受けたら、粗利率何%だなって一瞬で浮かんじゃったんですよ。

で、それ出来ます!って答えて。

今その事業を始めてるんですが、長期的に考えたらファッション、アパレル市場、メンズレディースあわせて8.4兆円の市場規模があって、その中の百貨店クラスのターゲットの市場規模がだいたい32パーセント、3兆円くらいあるんですね。
例えば百貨店のセミオーダーとかオーダーメードに飽き足らない3兆円の中の1パーセントが利用するようになったとしても3百億円の市場規模。今、デザインとかパターンは世界レベルに通用する仲間にお願いをしていて、一方でITに長けた人であったり、Webデザインに長けた人たちもパートナーに引き入れて、システムを作ってもらっているとこです。
ただ無尽蔵にデザインを選べると、お客様も悩んでしまうので、ある程度絞り込んで。
例えばスタイリストの方や、ファッションジャーナリストの方、ファッション雑誌の編集長などが選ぶ今年のトレンド3選とか。その中でも素材が3つ選べたりとか。
ある意味ディレクションしていただいてる方との共同っていうものがあれば。

ありふれたファストファッションのトレンドじゃない、本当に欲しい1着を手に入れられる世の中を作りたいなと思っていて。」

“服を作る”の全てをかなえる
“Fukule(フクル)”

まるでこの新規事業のためにこれまでのキャリアを積んできたみたいですね!
お話には、かなり企業秘密みたいなところがありますか大丈夫ですか?

「真似できないですよ。それがそろってる所は他にない。」

かっこいい!

「一点物が工業レベル縫える工場って今のところ世界にないんですよ。

うちの実家の縫製工場も量産工場なんですけど、1回のオーダーで同じモノを百着とか千着とか作るのが普通で。同じコストがかかるので、当然いやがりますし。

一点物を工業レベルで効率化したり、低コスト化するってことを今やろうと思っていて、ドイツでインダストリー4.0っていう国策をとっていて。産業革命の段階順に追ってくと最初が蒸気機関、次に電気、そしてITときて、次にくるのが人工知能だって言われてて。人工知能とIT化で工場の全体の仕組みを管理して、自動車産業の効率化、低コスト化する政策を行ってるらしいんですけど。その中でマス・カスタマゼーションっていう、多くの人に適正化された商品を提供するって言う考え方があるらしくて。それをすでにハーレーダビットソンがもうやってるんですよ。成功事例として。
まあハーレーダビットソンであればウン百万するバイクを自分好みにカスタムするお金持ちをターゲットとして、そういう取り組みができるでしょうけど。

私たちはアパレル版のマス・カスタマゼーション。一点物を量産と同じ効率コストで提供する工場をまず作ろうと思っていて。

私は実家が縫製工場なので、今ある建物とミシン、縫製に関する機械をそのまま一点物が縫えるように配置しスタッフのトレーニングをすれば転用できる可能性があるんですよね。

他方では世界レベルに通用するデザインとかパターンを作ってくれる仲間もいますし、IT側のスペシャリストの方々もこの4年でかなり繫がりが出来てきたので、他には真似が出来ない。

実際に昔からメンズのシャツとか百貨店などでイージーオーダーってやってて、その辺をネット化させてるベンチャーさんもいらっしゃるんですけど、全てメンズだけなんですね。きっちりとしたシャツとか。作りやすいじゃないですか。既存の決まったラインにただインターネットでオーダーするってだけの仕組み。

なので私たちはレディースもメンズも境なく、オフィシャルウエアだけではないファッションをセミオーダーできるってところに取り組んでいる最中。」

準備中の新規事業『Fukule』のWebサイト。

システム的には、インターネットでお客様が注文した瞬間にパターンデータを直接自動裁断機に飛ばして裁断してくれる…。そんなシステムを考えています。

今まで人の手間がかかっていたことを、マス・カスタマゼーションで効率化、低コスト化させることで、質の高い一点物を提供できるってのが頭の中ではできあがっているので。

私の実家で一点物を作れる技術者をすぐ育てるのは無理なんですけど、当面はそれができるサンプル屋さんに仕事を出す事が出来るので、実家の方で一点物を作れる人員を育てつつ、1年後から軌道に乗せて行くことを計画しています。

まずはその受注を取る為のシステムとメディアを作ったりしてますね。

それとは別に洋服を作るにはそぐわない生地で余っているモノもたくさんあるんですよね。それらを手芸洋裁を趣味とする方々で無料パターンをダウンロードしていた会員さんに販売する。データーベースの中から手芸洋裁用のECサイトに情報だけ飛ばしてあげるような形で。ここでも機屋さんの生地の倉庫の在庫を活用することを考えてますね。

構想中の新規事業は『Fukule(フクル)』という会社名なんですが、会社のビジョンとして、“服を作る”全てのことをかなえようと思っていて。服を作れる人、要は手芸を趣味とする方のためにDIY的なものをかなえさせてあげるのと、服を縫えない方のために服をオーダーメードという形でかなえるようなビジョンでやっていこうというのが長期的な展望ですね。」

ファッションで地域創生!
インターネットで
現場が潤う仕組み作り

工場を造るストーリーも、縫製業に携わってきたご実家の歴史を受け継ぐことになり、その結果、地域を活性化することになりますね!

「それは全然狙ったことではなくて、そう思われるのお恥ずかしいのですが。
意図的にコムデギャルソン、イオンでキャリアを積んで、桐生に戻ってきて、地方を活性化させたい!みたいな感じにされてしまうと、全然違う!(笑)」

それもう乗っかっちゃた方がいいんじゃないですか?地方創世系の流れに。

「それもそうなんですが、今日本全国に18の産地があると言われていて、桐生もその一つなんですけど、織物の産地には必ず染色業と、縫製業がたくさんあるはずなんですよね。

うちの実家だけで手に負えない量の仕事は当然、桐生の地域内にまわると思うんですね。

桐生だけで手に負えないのは全国18の産地に多分広まると思うんです。

先ほど、購入情報が情報から一瞬で裁断してという話をしたんですけど、この注文が例えば1日に5千個とか1万個できて桐生市内だけでは手に負えないとなったときに、そのうち5千個を北陸に送るとか、和歌山に送るとか、秋田に送るとかって形で縫ってもらえる場所を全国にネットワーク化させると、地域の活性化に一役買うことになる。

日本全国の繊維産地は超疲弊しているので。桐生もそうなんですけど。」
「それから、お金の流れ的にも現場に利益を出せるようになる。

今まで例えば1万円のシャツを縫うときに縫製工場さんに入るのって千円くらいなんですね。1割だけなんですよ。あと9割をSPA(Specialty store retailer of private label apparelの略。製造小売)会社かアパレルメーカーと小売店が半々に分けていた形だったので。

私たちが考えるビジネスモデルだと、5割が縫製工場さんに落ちる仕組みなんですよ。私たちの考える女性物のワンピースドレスっていうのは2万円くらいが平均客単価になるかなと思っているのですが、縫製業者さんに1万円落ちるっていうのは超破格なわけですよね。

そういった仕事を1着でも多く増やしていって、1社でもそういう取り組みができていけば最終的には縫製業の現場である地方の活性化につながっていく。」

そして桐生発世界へ!!

「それに、国内だけでなく、中国の富裕層をはじめ海外にもメイドインジャパンのオーダーメードを作りたいっていう要望が当然あると思いますし。

コムデギャルソンでやっていたようなデザインっていうのはヨーロッパで受けますし、アメリカではオーバーサイズのデザイン物のオーダーメードも引き合いがあるんじゃないか。投資家の方から、この事業は日本だけじゃ絶対終わらないと言っていただけて。

そういったところも積み重ねて行けば、百貨店3兆円だけの1パーセント3百億だけじゃなくて、その十倍百倍になると日本のファッション業界、アパレル業界っていうのは構造自体が変わるんじゃないかと。

日本産業を空洞化させずに済む取り組みにできるんじゃないかなと。」

桐生発世界みたいなことになる。

「そうなんです、コムデギャルソンでパリコレクションに参加させていただいた経験から、やっぱり世界というのを意識します。

メイドインジャパンが世界で高い評価を受けているって言うのは非常にありがたい状況ですよね。

桐生発って、あんまり地元ブランドを売りにするのが好きじゃないんですが。

何も東京発である必要がないっていうか。やっぱり情報化社会ですよね。

ただ間違ってほしくないのが、地方だけで完結はしないことですよね。
地方にいる人たちは都心で、逆に都心にいる人たちには地方で活躍する機会を与えられるような。そういう仕組みが、これから必要かなと思います。

たまたま私がファッション系の事をしようと思っていて、地元がファッションとか繊維とかアパレルの町で、そこに都内で培ったブレーンを連れてUターンしてくることで多少は産業が活気づくと思います。ハードがあって、ソフトがない場所なので。ソフトがそろえば、インターネットの力を借りて独り立ちできるような仕組みをきっと作れると思うので。全国それぞれやられている事や特色は違うので、それに合った人材を確保できるならば、きっと日本全国それなりの雇用と収益を産めるんじゃないかなと思いますね。」

世代が変わりつつある

とはいえ、地方で優秀な方を確保するためには、民間だけでなく、行政の力も必要になるでしょうね?

「私はこちらに戻ってきて4年経ち、市役所とか、商工会議所の方とかも仲良くさせていただいて。こういう制度があるよとか、商工会議所の取り組みでこういう事を手伝ってくれないかとか、今まで知らなかったことを教えていただいて。顔を突き合わせて、こんなことやりたいんだよね、じゃあこういったこともあるよとか話ができると、またちょっと違う世界が見てきます。」
「桐生市内でも星野さんキッズバレイのような行政ときちんと組んで面白い取り組みをしている新しい組織も出てきているし。
他方で、私のような起業についても手厚く支援してくださる方もいらっしゃるので。行政の方も、企業の社長さんたちも理解を示してくれるようになってきました。
ちょうど私が戻ってきた時ぐらいから、状況が変わり始めてるのかなと。世代が変わり始めているのかもしれませんね。」

木島さんのような面白い人が面白いことを始める場所には理由がある。
桐生には新しい風が吹き始めているようです。

グローバルに活躍するためには、ローカルのにあるハードを活かすことが強みになることを体現する木島さんのプロジェクト。ひいては地元、桐生の魅力を世界へ発信することにもなりますよね。木島さんの新しい取り組み、そして桐生のこれからが楽しみです!
Profile

株式会社フクル、株式会社Huggyhuggy 代表取締役 

木島 広さん

株式会社フクル、株式会社Huggyhuggy 代表取締役 

木島 広さん

群馬県桐生市出身。1998年、文化服装学院アパレルマーチャンダイジング科卒業。1998年、㈱レオパールで営業を担当。1999年、㈱コムデギャルソンのブランド『JYUNYA WATANABE』でパタンナーアシスタントを経てパタンナーへ。2005年に『JYUNYA WATANABE』チーフパタンナーに就任。
2008年、イオントップバリュ㈱で衣料商品企画開発部のチーフクリエイティブデザイナーに就任。
2011年に個人事業主として起業。2014年、株式会社Huggyhuggy(ハギーハギー)設立。今年、2015年、株式会社フクルを設立。

HIROSHI KIJIMA's
FAVORITE TIPS

BOOK

『人を動かす』
デール・カーネギー著

ちょうどコムデギャルソンからイオンに移るときに読んだんですけど。コムデギャルソンの時は本当に軍隊みたいな生活をしてて(笑)。一方で人を動かすときに、何かを命令するんじゃなくて、自発的に行動を啓発するようなやり方もあるんじゃないか、という事を思い起こさせてくれた一冊で。すごく人生観が変わりました。