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Interview

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大手広告会社よりも地元のNPO! 故里、桐生で働く意義!

NPO法人キッズバレイ事務局長
矢野健太さん

 桐生高校生徒会長、京都大学のアメフト部出身、電通勤務と、華やかな経歴から地元、桐生NPOキッズバレイへのUターン転職という、イマドキなキャリアを持つ矢野健太氏。

 平成生まれに見えない昭和なノリで、桐生の伝統産業に携わるご年配の方から、商店街のお頭、地元若手議員まで顔が利き(前回、インタビューさせていただいたキッズバレイ代表理事星野麻実さんや次回、紹介するHuggyhuggyの木島広さんも彼にご紹介いただきました)、実は、桐生の町を愛し、愛されている男。

 彼への取材のお願いをしたところ“是非、桐生の魅力を感じて欲しい!”と、桐生が一年で一番盛り上がる『桐生八木節まつり』開催期間の真っ只中に取材日を設定!(その模様はコチラの動画をご覧ください)お祭りのお手伝いの忙しい合間を縫ってインタビューさせていただきました。

 世間一般が憧れる大企業勤務から地方への転職を選択した彼の真意とは!?

単なるミーハーではありません
第一に地元のこと考えてます!

「もともとテレビ局に入りたくて。中学生の頃、『学校へ行こう』とか大好きで。こんな番組作りたいって思って。

こんな田舎の人間が電通とか知らないじゃないですか。京大はテレビ局入りやすいって聞いて。

東京行きたかったんでキー局しか受けなかったけど、落ちて他に受ける企業考えてなくて、いくつか受けて電通受かってメディアの仕事できそうだし、いろいろやれて楽しそうだし電通にしようと思って。」

 “ミーハーか!”と思わずツッコミを入れたくなるような軽いノリですけど…(笑)。そんな矢野さんがなぜ地域に戻ろうと?

京都大学アメリカンフットボール部で活躍していた頃(左)、電通中部支社勤務時代(中、右)の矢野氏。

「僕はすごくラッキー。本当に頭がいい、とかじゃなくて受験は運とかありますから。たまたま京大に入れて、その中でもアメフト部に入れて。

こんな田舎から、と言ってはなんですが、この地元から、そんなアッパーな環境に入れる人はなかなかいない。

優秀な人材がめちゃめちゃいっぱいいるんですよ。集中して。ほんとのアッパー中のアッパーっていうんですかね。卒業生はみんな、なんとか商事、なんとか物産、テレビ局、広告代理店みたいな。

話をするとめっちゃ頭切れるし、人間的に素晴らしいナイスガイな人達がたくさんいるところで。

僕の仲のよい友達は麻布高校とか都心の中高一貫校のやつが多いんですけど。

親が東大、官僚、大手商社が当たり前の中で、中高時代、何を考えてたか聞くと全然レベルが違うんですよ。夢は、どこどこの官僚になって、この部署になって、これやりたいんだ。だから大学ではこの研究室、この法律のゼミとか。

そりゃ、どんどん東京にばかり優秀な人材が集まってしまって、そこだけ伸びて行くなーと悟ったというか、思い知らされたというか。

東京に人が集中しすぎるって話があるけれど、一方で、ソレ級の人間は地方にはあんまりいないなってのがあって。地方では、特にモチベーションを持たずに過ごしてしまったり、親の経済的な事情で大学に行けない人も多い。
まだ景気が良かったときはいいけど、モノ作り系が衰退して、雇用が減り、人が減り。

地方ほどモノ作りの会社が多かったりするので、負のスパイラルに陥りやすくなっている。

だから都心と地方の差を縮めるために教育系の仕事をしたくて。」

家族への仕送り
自らの体験から実感した
教育の大切さ

 なぜにそんなに教育系の仕事に関心を持つようになったんですか?

「僕は男4人兄弟の長男で、裕福ではなかったのでかなりの額を仕送りしてました。というか今もまあまあしてて。

親は、弟達の大学進学は考えてなかったんですが、絶対、それじゃだめだって。次男も三男も桐生第一とかの強豪校で野球やっていて、それなりの選手だったんだけど、野球だけじゃなく勉強しろって。弟達には大学行けって。勉強させました。

電通入社当時、次男、三男が大学生、四男が高校生で。給料とかボーナスはほぼほぼ家への仕送りで消えて。今、いっぱしのサラリーマンになってちゃんと稼いでて、上3人、仕事に就き、あとは四男が無事卒業、就職してくれれば。

僕がたまたま電通に入って、いい給料もらえたから矢野家はやっていけたけど、これが地元で普通にやっていたらどうなってたんだろうって。

震災直後、自分はいい会社入っていい給料もらってる中、地元の友達は工場が稼働少なくなっちゃって今月の給料半分になっちゃってどうしようみたいな状況で、全然違うなって。

お金がないと、大学に行く、いいスキルを身につけて良い職を得るという選択肢がない。

今の雇用を作る人間というか、政治家は、弱者のスタンスわかってないんで。」

「電通入社して5年たてば三男が社会人になって、四男が大学生になる、そのタイミングで教育政策を学ぶために大学院に入ろうと。

その前に電通の人間として教育系で何か実績を作れたらと、NPOの人間に会いまくった。そうしたら、人生かけてやってる人が山ほどいるわけですよ。

直接お会いしたわけではないのですが、一番、感銘を受けたのはサルマン・カーン氏カーンアカデミーっていう『分かりやすい授業』ってのをyoutubeでアップするインドの方なんですけど。

あとTeach for Japan松田 悠介さん。超有名なNPOで、すべての子ども達に良質な教育が行き届くように、優秀な教師を派遣するという取り組みをしている。電通の人間として、松田さんのような方を支援する座組みを組めたらと思ったんですが。これは、自分自身でもやろう。

あと2年待ってる場合じゃない、って辞めちゃった。」

子どもに将来について
背中で教える大人がいる街に

「キッズバレイの取り組みに共感するのは、子ども達に色々な学びの機会を与えようっていうところと、ママ世代を支援しようっていうところと、仕事の幅が少ない桐生で起業を応援しようっていうところ。

子どもだけでなく、いかに将来について教えてくれる大人を作んないと、根本的なところが埋まんないなと。

日本の教育って行き届いてないかっていうと、そんなことはない。世界的にも有数な質の高い教育といわれているし。実際、本屋行けば千円とかで参考書買えるし、ネットで無料のコンテンツもある。学校でも学べる。どれだけ賢くなるプログラムを提供したところで、その先の目標となる大人、キャリアが地方にもいないと。

さっきの大学時代の麻布高出身の友達の話じゃないけど、都会の子は、数学が好きだ、でも数学好きなだけじゃ稼げないから、だったらこの証券会社行って、この仕事やるとがっつり稼げる、それを40歳位までやった後にどっかの会社の役員になって…という事を、高3年くらいで考えている。知ってるわけですよ。

重要なのは、まわりの親。まわりにどれだけ魅力的な大人がいるか。

一概に学歴だけが重要ってわけじゃないけど、ただ意識が問題。いろんな世界が選択肢がありますよっていう意識は、特に田舎だと分からないから。大学なんて行かなくていいっていう親も多いし。

いい大学入って、いい会社入った方がめちゃめちゃ視野が広がるし、楽しいこと多いに決まってるじゃないですか。

 いい例が豊田市。


世界の豊田って嘘かと思うくらい田舎なんですよね。けど、あそこのまわりの子ども達って、親がトヨタだからトヨタ行きたい、親が理工系の技術者だから理工の大学行きたいっていう。

親が働いてる姿を見て、影響されて学びのモチベーションを高めてる。勉強してエンジニアになって地元に貢献していく。それが自然かつ無理がない。

どの業種に限らずですけれど、そういうの重要だと思う。」

矢野さんが事務局長を務めるキッズバレイのオフィスが入っているコワーキング&コミュニティスペースcocotomo

『桐生八木節まつり』にて、cocotomoの前の出店で店員を勤める矢野さん。

「エリート系ではないけど、昔の商店街には、あったわけですよ。

おっちゃんとか子どもの相手してくれて。子どもは子どもながらに商店街の人ってこうなんだ、こんな仕事しているんだって。

今の子は、きっかけを作ってあげないと、そういう体験がなかなかない。キッズバレイは商店街の買い物体験とかやっていて。

子どもたちの体験プログラムで教育支援、子育てするママ世代の支援、また子ども達が憧れ目標となるような仕事人を地元に生み出す起業支援。キッズバレイの取り組みは、一見、異なる事業の組み合わせに見えて、筋が一本通っている。

星野さんにお声がけいただき、すごく共感して。」

雇用創出と人材教育の
両軸に関わっていきたい

「将来的には、 地元にこれからの時代のスバルとかトヨタみたいな企業をもう一個作る。その一方でキッズバレイみたいな子ども達に教育を提供するようなNPOも両軸でやっていくのが目標です。

雇用を、お金を生み出す側と人を育てる側と両方に関わっていけたら。

桐生は売るのが下手な会社めちゃめちゃ多い、あと仲の悪い会社が多い。だから、それをひとつに束ねてビッグカンパニーにしたら全然違うと思う。僕束ねようと真剣に考えてます。

15年ぐらいかけて、束ねてしっかり利益出して。

その一方で、キッズバレイみたいな教育とか、広く平等に子どもを支援するとか、企業で出した利益の受け皿となるようなNPOをしっかり育てる。」

『桐生八木節まつり』にキッズバレイがオフィスをかまえる地域の神輿を担いだ、矢野氏。

厳かさを感じる『桐生八木節まつり』の様子。

八木節を踊る矢野さん(矢野さんインタビュー動画の4分以降をご覧ください。)。

「なんて調子こいて勤続3年で自信満々で会社辞めたものの、まだまだ全然だめだなっていうのをこの2年で痛感して。もう一度、ビジネスの世界で修行しなければと感じていて。

僕は自分を削ってでも周りの人を幸せにするっていうのを宿命としていて。

大学のアメフト部時代にこれでもかという程、自分はダメ人間だって事を痛感させられたんですけど、本当にダメな人間ってわかったんですけど。それでも応援してくれる人がいるので、還元しなければいけないなと思っていて。

将来、僕の奥さんになる人にも迷惑をかけると思うんですが、その分、自分のまわりの弟とか家族とか地元の友達とかのためにやれたらなと思ってます。」

↑矢野健太さんのインタビュー動画はコチラ!※特に4分以降の『桐生八木節まつり』の桐生の熱気を感じてください。

 
Profile

NPO法人キッズバレイ事務局長

矢野健太さん

NPO法人キッズバレイ事務局長

矢野健太さん

矢野健太。桐生高校卒。京都大学経済学部卒業。新卒で電通入社。中部支社にて交通広告などの媒体担当として従事。教育系ベンチャーを経て、2015年4月に地元・桐生のNPO法人キッズバレイ事務局長に就任。現在は東京でも仕事を持ち、毎週東京と桐生を往復する二拠点生活。生まれは浅草で、出身は桐生の隣町の藪塚(現在、太田市と合併)。

KENTA YANO's
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PEOPLE

岐阜のNPO
G-net秋本祥治さん

僕がお世話になってる会社の社長もそこの出身の人間なんですけど。お会いして、自分のやりたいことを話したときに、彼の話をお聞きして。学生時代に、NPO G-netを立ち上げるために地元、岐阜に戻って。彼ほど優秀な人だったら電通とかマッキンゼーとか内定もらえるのに。僕は一回いいキャリア挟ませてもらってやってますけど。それさえも捨ててやってるってところが、すげえって。自分は全然リスク背負ってない、身削ってないって衝撃を受けました。

PEOPLE

京大アメフト部元監督
水野弥一さん

“自分も変えられない奴に世の中なんて変えられると思うか”ことあるごとにこの言葉が刺さります。チームの理念も最近ホームページにアップされて、そうだよなーと思ってます。

MUSIC

『Surreal』
浜崎あゆみ

“背負う覚悟の分だけ可能性を手にしてる”っていう歌詞なんですよ。
小6の時から僕のテーマソング。背負う分はんぱないんで。小6のときに、これ俺だとおもって。好きで聞いていると、だんだん自分に当てはまってきて、どんどん自分が背負うものが大きくなっていって。大学生で、中学以来久しぶりに聞いた時はさらに響きましたね。やべえって。