Quest for quality life through traveling around the world.

Interview

40

一生行くことなんてないと
思っていたケニアに
自分らしく輝ける場所があった

ACEF広報スタッフ
西川麻衣子さん

前回の若林寛さんに続きもう一方、ACEF(AFRICA CHILDREN EDUCATION FUND=アフリカ児童教育基金の会)のスタッフの方にご登場いただきました。
現在、広報をご担当されている西川麻衣子さん。
親戚の結婚式がキッカケで訪れたケニアに魅了され、10年間勤めた仕事を辞め、ケニアでのボランティア活動の道へと進んだ麻衣子さん。
東京の最先端をいく丸の内きれいめOL代表のような西川さんが、停電、断水が珍しくないような環境のケニアを人生の新天地として選ばれるなんてちょっと意外!と思ったのですが…、お話を伺ってみると、そこには“これからのライフワークスタイルの新しい形”があるようです。
東京、NY、パリ、ロンドン、ミラノ…、輝かしい女性が輝ける場所というのは都会というのが世の常でしたが、世界的に広がるグローバリゼーション、インターネットの普及などで都市と地方のギャップがなくなる中、その状況は変ってきているのかもしれません。
輝く場所は人それぞれ、世界のどこかにきっとある!?
西川さんが自分らしさを発揮し活き活きと生活できる場所として、ケニアを選んだ理由は?そしてケニアの魅力とは?お話を伺いました。

全く思いもよらなかった場所に
強く感じた
ご縁とつながり

ケニアに来ようと思ったきっかけは何ですか?




「私の従兄弟がACEFの塩尻夫妻の娘さんと結婚することになって、二人の結婚式に出席するために来たのが初めてケニアを訪れることになったきっかけです。

2014従兄弟結婚式 (1)

「それが2014年の2月ですね。

それまで海外といえばハワイと中国しか行ったことがなくて、アフリカなんて全く縁のない国だと思っていたんです。

だから来るなんて思っていなかったし、行き先の候補にさえ思いつきもしなかった。

遠すぎるし、何も知らないし、自分が行けるような場所じゃないって思っていたから。

でも、その結婚式での滞在がとても印象深くて。

サファリでワニがカバの赤ちゃんを食べる瞬間や、ライオンがイボイノシシをハンティングする様子とかを目の当たりにして。 今までテレビでのそういうシーンは、食べられちゃう動物がかわいそうという思いが強くてとても目を向けられなかったんですけれど。実際、眼の前で見て、“生きる”ってすごくシンプルだなと気づかされたというか。

あと、人がとても魅力的で。

ACEFのつながりで地元の小学校の子どもたちや孤児院の子どもたちに会う機会を持つことができて、みんなが遠い国、日本から来た私を歓迎してくれたんですね。

初めて会って、別に感謝されることなんて何もしてないのにとても喜んでくれて。

それは、サファリを案内してくれたドライバーもホテルのスタッフも出会った人たちがみんなそうで。陽気で温かくて。スワヒリ語はもちろん喋れなかったから、最低限の英語での会話だったんだけど、みんな優しくしてくれるし、ウェルカムしてくれる。

今まで全く縁のなかった場所にすごく寛大に迎え入れられているのを感じて。

自分の人生が、今まで全く別世界だったケニアの人たちの人生と重なって、影響を受けて、関係している。

私がケニアに来れたのは、今の両親の元に生まれ、今までの友達、交友関係を経て、自分がしてきた人生の一つ一つの選択からここにたどり着いた…とか深い感慨を覚えまして。

日本から遥か離れた遠い土地の人達に、こんなにも楽しませもらって、本当幸せな気持ちにしてもらえて、ありがたいなって。

だからケニアのために何か恩返しができたらいいなぁと思ったんですよね。」

それで、その翌年にボランティアでいらっしゃったんですね?




「2015年の9月から4か月半ボランティアのために滞在しました。

10年間、アパレルの会社に勤めて営業や企画を担当していたんですが、自然への興味が高じてハーブやアロマの勉強をし始めたら、それがすごく楽しくなって、その方面で転職を考え、会社を辞めることを決意したんですね。

そのタイミングで、どこか海外へ行こうと思った時に、“あ、そうだ私にはケニアがある”って思ったんです。

ケニアに行ったら他の事に目覚めるかもしれないし、もっとやりたいものが見つかるかもしれないから、次の仕事は決めないで行きました。

次の仕事があると後何日で帰らないといけないとか気にしなければいけないだろうし、それは嫌だなと思ってたんですね。のびのびしたかったのもありまして。」




不安はなかったんでしょうか?




「親戚がNPOをやっているというのはすごく大きいですね。

私も親戚がいなかったらボランティアでアフリカに行くという選択は絶対しませんでした。だから、そういう面ではアフリカに縁が出来たという事ですね。」




西川さんはいかにも東京ライフを満喫する優雅なOLさんという雰囲気なのですが、ケニアの過酷な生活をつらいと思った事はないのでしょうか?




「ないですね。基本的に郷に入っては郷に従えの精神ですから。」




とは言え、治安面や衛生面など日本と同じような環境ではなかったりしませんか?


「最初は、街に出ただけでみんなが私のお財布を狙ってるみたいな疑心暗鬼にかられてて、ものすごい早足で歩いてたんですけど(笑)。“ハァ~イ!”とか話しかけられるのもちょっと怖いなって思ってましたし。だけど、ケニア人とコミュニケーションをとるうちに、彼らの優しさに気づいて。

“アフリカって危険”というイメージが先行して、まあもちろん本当に危険な場所もあるし、実際に被害にあった方とかもいるけど、やっぱり自分が実際感じるケニア人へのイメージって陽気で朗らかで優しい。特に、このエンブって地域が安全なのもあるかと思いますが。」

当たり前と思っていたことの
“ありがたさ”に
気づかせてくれたケニア

そんなケニアの魅力はなんですか?




「大自然のエネルギー。緑があって植物も色鮮やかだし、動物も人も生き生きしてる。

あと温暖な気候もいいですね。」




今まで行った場所では、どこが一番素晴らしかったですか?




「一昨年(2015年)の再訪のもうひとつの目的でもあったんですがケニア山へ登ったんですね。

それはとても素晴らしかったです。

私は登山が大好きなんですけど、初めてケニアに来たときに、みんなに“ケニア山は面白いよ”って勧められて。ケニア山はアフリカ大陸で二番目に高い山で、歩いて登れる場所の最高峰が4985mのレナナ峰。

ほぼ5000mの山なんて普通の人が登れるもんじゃないとその時は思ったんですね。だから、その時は冗談半分で『来年みんなで登ろう』と話してたんですが。

でも本当に登ってみたくて。帰国してからは、いつか登るケニア山に備えてトレーニングしようと思って、それまではたまにしか行ってなかった登山を、月1回は行くようにしたんですね。

それで、2015年にケニア行きを決意した時に、ケニア山にも登ろうって。

2泊3日の行程で、ガイド、料理人、ポーターと一緒に登りました。」

↑ケニア山レナナ峰から見た日の出。

「初日は標高3200mのロッジまで車で行って宿泊して体を慣らすんです。2日目は4200mのロッジまで、酸素が薄いのでとにかくゆっくりゆっくり登って。そして3日目に、いよいよピークアタック。午前2時半に山頂で迎える夜明けを目指してロッジをスタートして。

上を眺めながら歩きたいくらいの美しい満天の星空に見守られながら登っていくのはとても特別な気持ちでした。

そのうちに、いつの間にか紺色の空が徐々にオレンジ色に明らんできて。

雲海からのご来光を見ることができました。

山頂に着いた時、自分が本当にケニア山の山頂に立っているんだって感動と、この日のためにこつこつと努力してきた夢が叶った達成感とで嬉しくて涙が溢れました。


山頂から見下ろすケニアの景色は雄大という言葉がピッタリでダイナミックな美しさに、言葉では表せないくらい感動しましたね。」




ボランティアを通して気づいたケニアの魅力はありますか?




「ボランティア活動の一環として、ケニア中心部に位置するイシオロ郡トゥルカナ族の村に井戸掘りの支援に行ったんですが、本当に電気も、もちろん水道もない村で。水を得るためには、遠くの川へ汲みに行く。

川って言っても日本みたいなせせらぎの川じゃなくて、泥水なんです。

雨季にだけ出現する土の混じった水って感じで。

中には往復3時間かけて水を汲みに来る人もいます。

川の水が汲めないときは、地面に穴を掘って、そこからじわじわ湧いてくる水を待つのですが、子どもや女性達が汲んでるんですね。

しかも朝の8時から夕方まで1日かけてずっとその作業をしている。

朝起きて、水を汲んで、夕飯用のお水を手に入れてご飯を食べる。

水って人間にとっても、植物や動物にとっても一番必要不可欠なものじゃないですか?

そんな一番大切なものでさえ、簡単に手に入らない場所があるんだって事を知って。

すごい驚いたし。

水はもちろん、日常的に、断水したり停電したりってこともありますし。」


ケニアKENYA


KANYA



↑2015年11月、ケニア中心部に位置するイシオロ郡トゥルカナ族の村に井戸作りの支援に行った際の様子。日帰りの予定がトラブルのため急遽3日間の作業になったそう。


 


日本で蛇口を捻れば水もお湯もすぐに出て、温度調節まで出来るなんてのは世界的には特別な事なんですよね。




「そうそう。だから電灯が灯るだけで良かったって思うし、お茶をいただけることだけで嬉しいし。日々の食事だってありがたくなります。


あと、ケニアはとても交通事故が多いんですね。スピードを出すし、バイクはノーヘルですし。

日本みたいに数分後に救急車が来るような場所ではないので、一度事故を起こしてしまうと命を落とす可能性もある。ケニアで身近な方が事故で亡くなったこともあって、存在することって簡単なことじゃないんだなってすごく思ったんです。

存在することが難しい、有ることが難しいって書いて“有難い”って書くじゃないですか。

だからその“有難い”ことも、感謝の言葉である“ありがとう”も多分同じところから発生してきてると思うから、存在するものに感謝をする事の大切さを改めて強く感じるようになりました。

自分が生きてる事ももちろんそうだし、家族や友達がいてくれる事もそうだし、日本で食べ物や水や電気を何不自由なく享受出来るのは本当に感謝すべきことなんだなってすごく感じました。

だからこれまで当たり前と思っていたことのありがたさに気づかせてくれたのもケニアの魅力のひとつですね。」

何でもあるはずの東京には無い
何も無いところから
生まれる大切なモノ

ケニアの生活を経て日本の暮らしについて思う事は?




「日本は何でもあって便利なんですけど、その便利さによって失ってるものがあるというか。

無いものが無いって思うくらい物にあふれている日本に対して、ケニアは無いものばかり。だから、みんなあるものを活用して自分で作り出しちゃう。

みんないろんな代替品を作ってまかなっているんですね。

日本って、何にしても、それ専用の物が必ずあるじゃないですか?

例えばジョーロ、ケニアの人って何かに水をまいたりするのに、何かが入ってたケースを上だけカットしてそれを代わりに使っちゃったりしてるんです。

栓抜きもコインをうまく使って開けちゃったり(笑)。

器用にDIYしたり、リサイクル、リユースでまかなっているところとかすごい。

何もないところから作り出す能力にとても長けています。」




生きる本質的なところに長けている?




「そうそうそう。生きる力強さというか。ある意味サバイバル精神、サバイバル能力がありますね、ケニアの人って。ケニアには生命力の強さがあるなって感じますし。」

↑超ローカルなマーケット。地元の人に違和感なくなじんでます。

特に東京の生活との違いを感じるところは?




「東京は、とにかくスピード社会じゃないですか。

一方、ケニアは、ポレポレ社会で。“ポレポレ”ってゆっくりって意味なんですけど、常にみんなが“そんな急がないで”って感じなんですよ、

たまにお店のレジの会計とか“そんなに遅いのか!”って思うくらい(笑)。

すっごいゆっくりなんだけど。

でもその分、焦るというか、急かされることがないんですよね。」




それが逆に心地いい?




「そうそう。

ハクナマタタ精神。“ハクナマタタ”ってノープロブレム、問題ないさって意味なんだけど、ケニア人ってまあ大丈夫よ!って感じなの。

日本は、失敗は許されないじゃないけど、上手くこなしていかないといけないみたいなところがありますよね。

それがないからそこがすごく伸び伸びとできるところかな。

そこも魅力ですかね。」

ポレポレ精神で
自分の出来る事を
やればいい

これから先、どんなことをしていきたいとお考えですか?




「私も仕事が好きなので東京でバリバリ働くのも楽しいですし、だから東京は面白いのですけど。

アフリカで仕事をするのは、それとはまたちょっと違うかもしれないですね。

転職のきっかけにもなったハーブアロマ系に関わる仕事は今後やりたいジャンルなので、その中で将来的にアフリカのものを使った何かをしてみたい。

今も、日本に帰国した際に、アフリカのココナッツオイルを使ったアロマのレッスンを開催したり、ケニアのハーブティーを紹介したりってことをしたんですね。」

アロマセラピーレッスン3

↑帰国後、開催し好評を博したアロマレッスン。ケニアから持ち帰ったココナッツオイルを使い、リップクリームを作りました。参加された方にはケニアで飲んで美味しかったレモングラスとローズマリーのチャイがふるまわれました。




「そういった、何かしらアフリカのエッセンスを取り入れたことに取り組んでいきたいですね。」


ACEF広報担当 西川麻衣子さん

↑売り上げを孤児院の運営費にあてることを目的としたエコバッグの製作にも着手。西川さんは、アパレル企画経験を活かし、デザインや生地選びを担当しています。日本での国際交流イベントなどで販売予定とのこと。



そう考えると、ケニアは日本にいるよりも自分のやりたいことにつながりそうですか?




「そうですね。なんでしょう…、最終的には日本とケニアをつなげていきたいってことですかね。

日本の人に、ケニアの良さを紹介したいという思いはあります。

ケニアの情報って日本にいるとあまり入ってこないですよね。

自分から取ろうと思っても、なかなか取れるものじゃないですし。

自然もそうだし、人もそうだし、文化もそうだし、ケニアってこういう国だよってことを伝えて行きたいです。

それこそケニアに来て、実際に日本の環境のありがたさっていうのも感じたから。

どうしても自分の国と対比するじゃないですか。

そうすると気づく事っていっぱいあるので。」


カンガルー女性高校 浴衣着付け

↑ACEFのボランティアスタッフが日本語クラスを教えているカンガルー女子高校での一幕。授業の一環として、日本の文化を紹介をしようということで浴衣の着付けを体験してもらいました。




最後に“ケニアに来たい”、“ボランティアをしたい”と思っている方にアドバイスがあったら教えてください。




「ボランティアに関しては、“特別な資格も持っていない、語学も堪能でない自分に何か出来る事はありますか?”ってことをよく聞かれるんですけど、ボランティアは有志なので、自分が出来る事をすればいいと思うんです。

何も人に強制されてやるものではないから。来てから、自分で探してもいいと思いますし。

私のように直接何かの作業現場に参加してケニア人を助ける形とは違った支援も出来ると思うんです。私は今、ACEFの広報を担当しているんですけれど、“私が住んでる町はちょっと地方の方で、こんな感じですよ”とか、“食べ物はこういうもの食べてますよ”っていう風にケニアを紹介することで、他の人にケニアを身近に感じてもらったり、知ってもらったりって事も一つのボランティアの形だと思いますので。

是非ハードルを高く考えずに、自分が出来る事をあわてずに模索して貰えばいいかなと思います。」

決してストイックな選択というわけではなく、たまたま自分の心地良さを追い求めた先にケニアがあった。日本視点で過酷と思ってしまいがちなケニア暮らしも実は見方を変えれば現代日本が忘れている豊かさに溢れている。

ファッション感度が高く、東京ライフを満喫してきた西川さんのような方が、180度真逆とも思われる生活環境のケニアに惹かれる事に今の時代の価値観を感じます。

ちょっと海外へ足を伸ばしてみれば、今まで思いもしなかった何処かに、自分が自分らしく生きられる居場所を発見できるかもしれない。意識的に行動すればそれが決して難しくない時代なのかもしれません。

ACEF広報担当 西川麻衣子さん


そして、西川さんが活動されていてるACEFさんでは現在、エイズ孤児施設『JUMP&SMILE』のための資金を募るクラウドファンディングを行っています(2017年3月15日締め切り)。是非、ご協力いただけましたら幸いです。

Profile

ACEF広報スタッフ

西川麻衣子さん

ACEF広報スタッフ

西川麻衣子さん

1983年9月5日生まれ、東京都出身。

2006年、(株)東京ソワール入社。アパレル会社でアクセサリーの営業・企画・バイヤーを担当。

2015年 約10年間勤めた会社を退職。9月にケニアに渡り、NGO団体ACEF(アフリカ児童教育基金の会)でボランティア活動に従事。

2016年2月に4ヶ月半のケニアボランティアを経て帰国。

2016年10月からケニアで2度目のボランティア活動中。

ACEFの広報や日本のテレビ取材のアテンドなど、多岐に渡り団体の活動をサポート。