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interview

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教育現場が盛り上がれば 地域も元気になる! 子ども達が拓く明るい未来

NPO法人キッズバレイ代表理事
星野麻実さん

 群馬県、桐生市の目抜き通り本町通りと末広通りが交差する街の中心地、本町五丁目交差点に程近いオフィスビル1階に今年(2015年)3月オープンしたコワーキング&コミュニティスペースcocotomo(ココトモ)。
 天然木を基調にした温かみを感じるスタイリッシュなデザイン空間は、昭和なノリの商店街で異彩を放つ。ノートPCに向かって仕事に勤しむ人達で日々賑わい、週末は親子でのワークショップで活況を呈している。
 この場所を運営するのは2013年に設立されたNPO法人キッズバレイ。オフィスをcocotomo内に構えつつ、子ども達の育成、ママ支援、起業支援といった事業に関わるイベントもここで開催している。そんな“子どもを核にした地域経済の活性化”というユニークなアプローチで、注目を集めているキッズバレイの代表理事、星野麻実さんに桐生を仕事の拠点として選んだ経緯、そしてキッズバレイの取り組みについて聞いてみました。

高校時代は一切興味がなかった
大人になって知る地元の素晴らしさ

「4、5年前、社員600人位の会社から10人位の会社に転職したんですよ。で、そのときに小さい会社にいると自分の力で会社の未来が決まるんだなと肌身で感じて起業を思い立ち。何処にしよう?と。実際に何かをやろうと思ったときに、地元かなと。

初めのうちは月に2、3回帰って来て、そんなに思うところはなかったんですが、熱い思いを持ってる人がいたり、この地域にはすごい歴史があることを知ったり、さかのぼるととてもイノベーティブな活動をしている人がたくさんいたりと。

例えば、MOMAで売り上げナンバー1になった桐生産のニットマフラーを生産しているニット工場の熱いおじさんがいたり。奥様方も芸術に造詣の深い方がたくさんいたり。

ここの文化水準は高いんだなというのを東京から戻ってきて改めて気づいた。高校生ぐらいまでは、ここにいても、しょうがないと思って、東京に出たんですけど。」

↑自然豊かな里山に囲まれた桐生の町。

「いろんな場所で、いろんな経験をして、やっぱり、この場所で何かをやってみたいと思う気持ちが芽生えました。

そんなときに東日本大震災が起こって。それでも、なんで私は会社に行かなければいけないのかなと自問自答して。働くことであったり、自分の暮らしのことであったりをもう一度考えるきっかけになりました。隣の人が知らない人であっても、その人を大事に思える自分でいたいと思うし、そういう気持ちでいれる環境にいたい。

このまま東京にいたら自己成長にも繋がらないかなと思って。帰ろうって思ったんです。」

これからの地域活性化の核は
教育現場

桐生の町で、どんなことをしたいと思いますか?

「教育はどこに行っても重要だと思うし。いろんな問題をたどっていくと教育に行き着いて。学校って、その地域にとって、とても重要な存在になっていると思ってて。自分の意志を持って自分で考える人を増やすために学校や地域が子ども達とどのように向き合って、どう教育的な場を作ることができるのか、どうすれば子ども達にいろんなチャンスを与えられるのかっていうのはどこに行っても同じだし。チャンスさえあれば子ども達は絶対に成長するし、自分で何かつかみ取ろうとするので。そんなことを実現するアイディアを地域に還元したいし。

近年、学校って、子どもたちを守るために、危ないからといって、校門を閉めて、外部の人は入れない。知らない人は授業に入れない、決められた内容を先生がやる、教科書の範疇で学ぶ。地域と切り離されてしまったと思うんです。

けど、今、それをもう一度、開いていこうって話があって。コミュニティスクールやコラボスクールとか。むしろ地域の住民たちこそ、どういう風に子どもを育てるかについて関わって一緒にやろうよって。そういうところに大人が関わって、子ども達や学校を地域の活動の中心に据えるということが、その地域周辺をすごく活性化するんじゃないかなと思っているんです。子ども達の環境が良くなっていけば地域も良くなっていくっていう。そんな循環を作るためにはどうしたらいいのかなっていうのを、いろんな先駆的な場所で見てみたい。」

↑キッズバレイが主催、運営する『きりゅうアフタースクール』。この夏に行われた『夏休みスペシャル』の絵画教室と書道教室の模様。参加費は¥100!(写真/キッズバレイ ブログより)

 

「イタリアとかアメリカとか、いくつか見に行ってるんですけど。
いろんな学校があって。
イタリアで見に行ったのはレッジョエミリアっていう。それは第二次世界大戦後、地域の人たちが、荒廃しちゃった町で、未来を思い描ける子ども達を育てていきたいということで、アートという面と教育学という面をコラボさせて新しい教育を作って、今や世界一の幼児教育と呼ばれるものを市民が作り上げたんですけど。
そういうの素敵だなって。

アメリカでも、サドベリースクールとか。
オルタナティブ教育ってよく言われるんですけど。学校だけじゃなくて、いろんな価値観、偏差値以外の価値観で子ども達の才能を伸ばす場所であったり、機会であったり。発見させる出会いとか。そういう選択肢が増えるといろいろ出来てくるのかな。

オランダではイエナプラン(ドイツ発祥の異なる学年の子ども達でクラスを編成するのが特徴的な学校教育)とか。

日本でもスーパーグローバルハイスクール(SGH)っていう取り組みがなされてて、世界に通用する人材を育てたいと思っている。それは大学じゃ遅いから高校からやらせたい。大学とか企業と連携したり。NGO、NPOと連携してやってる高校もある。結構、いろいろなコラボレーションをして高校だけで完結しない授業を行っている。若干、特別な単位とかも作れるんですよね。SGHの認定を受ければ、カリキュラムの組み替えとかも出来たりします。基本的には指導要綱に則りながら、新しい時代に向け、どう読み替えていくか、どう内容をアレンジしていくか。だから今、すごい変革期だと思う。

ここ群馬県の公立高校はそれぞれにカラーがあって素晴らしいと思ってるんで。
もっとそういう子たちが地域に出て来てほしいし、地域で何かやって欲しいし。」

10年後、子ども達が
どういう大人になるのか

 “教育”ってことを考えると、桐生で起業することに手応えがありそうですね?

「いろんなことやってますけど、主要の事業である教育系の話だと結果が分かるのは10年後とか、15年後なので、今私たちが一生懸命小学生とふれあって、1、2年でちょっとずつ変化が見られるようになった。彼らが10年後どういう大人になったかを見た時に、やってきたことが正しいかったなとか、もうちょっとこういうことが出来たのかなと思うんじゃないですかね。

cocotomoは今年(2015年)の3月オープン。私たちがメインでやりたいのは、人の繫がりであったり、今までなかった機会を増やしてちょっと生活が変わったとか暮らしが豊かになったとかのソフトな部分を作っていくこと。ここは、その見える化というか。cocotomoに行けば、困ったら良い形で解決に導いてくれる人達に出会えるかもしれないというようなことをキッズバレイとしてはやりたいと思っているし。ここができたことで今までキッズバレイって何をやってるか知らないって人に、“あそこの本町五丁目にいる人達ね”というのが理解していただけるようになったのが大きいかなと思っています。」

↑cocotomo内の様子。右側がカフェ風のワーキングスペース。手前左がファミリー&キッズスペース。左奥がキッズデスク。

キッズバレイの取り組み自体はもちろんなんですが、オフィスのデザインもいまどきで新しいですね。

「ここのデザインは地元の工務店さんと建設会社さんにお願いして。インテリアは桐生の作家さんのものを使わせてもらったり。工務店の方はUターンで桐生に帰って来てきた方で。木のぬくもりがいいということで、いろいろ工夫して作ってくれて。

ここのソファの生地は、桐生のテキスタイルプランナー(生地をデザインする人)畠山陽子さんがデザインしたものです。ルームオブ桐生というブランドで、商工会議所が商品開発したんですよね。ソファ以外にルームオブ桐生に携わってる技術者や職人さんに作ってもらっています。」

オフィスの空間作りにも地元の魅力が詰まっているんですね。 そんなcocotomoオープンから半年。地元の方の反応は?

「cocotomoをシェアスペースとして使ってくださるキッズバレイの事業に関係する方ばかりでなく、この場所を利用してくれる方は、たくさん増えてきていて。今後はそういう方との交流を広げていきたいなと思っています。」

地元でのニーズはますます高まり、よりお忙しくなっていくかと思いますが、

「東京では、あーいやだな、疲れたなと思った時に下を向いてたのが、空を見てあぁ、今日も星がきれいだなと思えるようになった。去年、キッズバレイの立ち上げと共に引っ越して来たんですが、空を見上げたり野山を眺める時間が多くなった。通勤は原付バイクで走ってるんですけど、空気をたくさん吸うようになった。歩き方や時間の感じ方とか、そういう何でもない普通のことが変わった。なんか気づく感度が高くなったというか。今まで花の香りなんて感じなかったけど、今日はキンモクセイのいい香りがするなとか感じるようになりました。」
暮らしていく上でも、自然が豊かな桐生はとてもいい所ですが、更に何か求めることはありますか?

「勉強とか、セミナーとかにいっぱい行きたいんですが、そういう機会はやっぱり都心に出て行かないと。移動に2時間半から3時間考えちゃうと1日予定を空けるのがなかなか難しくて。それがちょっと物足りないなと思うんですけど。もっともっとインプットしないと伝えられることがアップデートしないので。だからそれはちょっと努力しないとと思うこともあります。」

 今後の構想は?

「面白い人たちがいっぱい集まってくる町になるといいなと思っていて。私達は、こういう場所を運営したり、キッズバレイの活動でいろんな人たちの集まる場を作ることで、面白い人たちが繋がって新しいコラボレーションが生まれて、新しいプロジェクトが生まれたり。そこから次の発展があって、それを見て桐生って面白いなって思って来てくれる人がいたり。そういう循環をここから作っていけるといいなと思っています」

 もともと起業精神が強い優れた人材を多数輩出し、全国区の優良企業も多い土地、桐生。cocotomoは、そんな桐生精神を受け継ぐ新たな象徴の場所となりつつあるようです。市のキャッチフレーズ「伝統と創造、粋のまち桐生」の通り、星野さんのような新しい感性とスキルを持った人が興すハイブリッドなイノベーションで桐生は更に新たな魅力的な街になっていきそうです。

Profile

NPO法人キッズバレイ代表理事

星野麻実さん

NPO法人キッズバレイ代表理事

星野麻実さん

群馬県桐生市生まれ。高校卒業後、上京。法政大学社会学部を卒業後は、キャリア教育コーディネーターとして、全国各地の中学校、高校の探求型の学習をコーディネート。生きる力を育むためのプログラム開発や、学校現場で孤軍奮闘する先生方をバックアップするワークショップを開催。
子どもたちに誇れる地域づくりに挑戦したいと決め、桐生にUターン。
現在は、NPO法人キッズバレイの代表理事を務める。地域、市民、企業、学校、家庭をつなぐことで、子どもたちの無限の可能性を引き出し、多様な選択肢と確かな軸をもつ人材の排出を目指す。また、自分自身が、桐生と東京という二拠点を行き来するワークスタイルを実践。子育て世代が地方で働く選択肢を増やし、子育ても仕事も楽しめるワークスタイルの確立にも挑戦中。活動の拠点としてコワーキング&コミュニティースペースcocotomoを運営。

星野麻実's
FAVORITE TIPS

BOOK

エニアグラム
自分のことが分かる本

人間の性格を9種類に分類してエニアグラムっていう学問で、日本語訳されてるものが2、3冊しかないんですけど辞典代わりに使っています。人の多様性とか。色んな人を理解するきっかけにするのに結構読んでますね。ビジネスとは関係ないですけど、自分の人間としての成長に役立てたいなと思って読んでますね。