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世界に響く音を創る!お寺は理想の音作り空間②

真言宗智山派平塚山 薬王寺 住職
石川隆教さん

 前回お話を伺った、千葉県南房総の薬王寺というお寺を活動の拠点としてユニークな音楽制作に取り組むレコーディングエンジニア山口 泰さん。

 彼を理解し、活動を支える地元の方の存在がありました。そのひとりが、ご自身の管掌する薬王寺を山口さんにスタジオとして提供している石川隆教住職。

 どんな経緯で山口さんにお寺の空間を提供することにしたのか?また山口さんがお寺を活動の拠点とすることで何か周辺に変化はあったのか?ご住職に伺ってみました。

新しいコミュニティの場
としてのお寺

 「当時、父が住職を勤めていた那古寺観音堂の改修工事がありまして。時間とお金をかけて、けっこう大がかりなもので。たまたま千葉県内の智山派の青年僧侶が集まる会合がありまして。せっかく新しいお堂が出来たのだから、そこでただお経をあげて拝むだけではと。もっと広くいろんな人に来てもらってお寺の良さを感じてもらいたい。味わってもらいたい。ということで、いい機会なので『観音』という音楽コンサートも絡めたイベントを開催することにしたんです。

 コンサートのメインを務めたのが歌手のこやまよしこさんで、彼女を呼んでくれたのが山口君。彼が音楽に関わる部分を担当してくれて。


 monk(修行僧という意味)beatって名前だし、見た目もお寺に敬意を表してますって風貌ですしね。それからもお堂を使うコンサートなどで、アーティストさんを紹介してもらったり、音響設営をお願いしたりと、彼とお仕事させていただいて。


 その後、紆余曲折があって、僕のところに音楽スタジオを探しているという相談があって。この薬王寺のことをひらめいて。


 年に4回の行事以外は空いているお寺だったので。よかったら仕事場として使ってみてはどうかということになったんです。檀家さんにも了解を得て。


 その時は、彼は海岸沿いのスタジオにいて、環境が良いだろうと思われるでしょうけど。海が近くて、波の音が意外にうるさい。おもしろいことに、ここのほうが静かで音作りの環境が整っていると。他の家より天井が高いのがいいのかとか音作りのことはよくわからないけど、非常に気に入ってくれて。  格安ってこともあるんだけどね。」

山口さんがmonk beat studioとしてお世話になっている薬王寺の境内にて。

「彼がいることで、いろんな人がここに集う、実際に、ここでもいろんなイベントをやり始めて。それなりに、地元のみなさんも注目してて。

お寺としては、そういうコミュニティの場になれるのは、すごく喜ばしい。 檀家さんは、仏さんがいるから掃除をして下さる、大事にして下さる。でも、そこから先に何かするってのはなかなか難しい。彼がいろんな取り組みをすることで、古いところへ新しい人たちが出入りするようになって、お寺がコミュニケーションをとる象徴的な場所として機能し始めて。みんなが喜んで。お寺ってこういうもんなんだって思ってくれたら、お寺としては結果オーライです。

彼の仕事だって、“楽しい”って字がついてるくらいだからね。彼と音楽の仕事をする方も、この場所を喜んでくれるのはいいことで。 お寺も仏さんの前にお願いに来られる方に安心を与える。それがお寺の使命。そういう意味では彼がやろうとしていてる音楽と方向は一致してるんです。

彼の仲間が、東田トモヒロさんのイベントコンサートをここでやりたいってことがあって。 そのときも僕のほうから注文を出させてもらいました。

どういうコンセプトでやろうかと。そのタイトルもみんなで考えて。 最終的に『然』というタイトル。自然の“ゼン”で“ネン”。『然』、まあ、ようするに、あるがままにと。

今、政治や経済やみなさんの考え方が多様化してるからって訳じゃないけど、震災以降は、いろんな考え方や生き方が模索されるようになった。 持続可能な未来を考えると。今、享受してるこの世界のモノを半分捨てる、ほとんど捨てなきゃいけないとか。でも生きるためにとか、みんなの生活のためにとか、社会全体の幸福のためにとかって、30年、40年前の人が考えてやってきた。 そういった経緯を受け入れていかなければいけない。受け入れた上で、この先、僕らがどうしていくか。まず、どういうことで自分たちの命が支えらているのか?まず見つめ直すことをしなきゃいけないんじゃないか。単に何々反対っていうことだけを叫んでいるだけでは先が見えてこないんじゃないか。 今ある自然や今ある考え方、でもそれはどういうことでこうなってきたかを見つめ直す。そういうコンセプト。みんながわかる指針となって、どこにいても目標となって、そこに向かって歩いていけるような。どこまで伝わるかわからないんだけど。

そんな思いから、『然 あるがままに』というタイトルに決めて。開催したら大勢の方が来てくださいました。 庭にいろんなテナントを出して、昼間はテナントを楽しみつつ夜はコンサートを開催して。あんなに人が集まったのは初めてってくらい人が集まって。床がぬけそるんじゃないかってくらいに心配しました。 お寺を開放して、彼にお寺を使ってもらって、お寺の本来あるべき姿と役目が彼のやりたい音楽の方向性と一致して大成功を収めたいい例です。

もっともっと発信していければいいんですけど。 お寺や、お坊さんの役割は、増えてきてる気がするし。かと言って、 若人よ集えなんていったら怪しいし、こちらから悩みを聞きますとか、不自然だし。

なんの垣根なしに来てくれるとうれしいです。

山口君は、その一役を担ってくれている。

お寺でのイベントを通して、お話を聞きいてみようかな、相談に行ってみようかなと、いい意味でお寺の敷居が低くなってくれれば。」

 薬王寺の名前の由来である本尊の如来様は、菩薩の地蔵菩薩や観音菩薩よりも格が上で、とても高貴な仏様が迎え入れられているお寺とか。 時代は変わっても、困ってる人に薬を施すというお寺の名にふさわしいコミュニティの場として、今後の活動に一層の期待が高まります!
Profile

真言宗智山派平塚山 薬王寺 住職

石川隆教さん

真言宗智山派平塚山 薬王寺 住職

石川隆教さん

1963年生まれ。大正大学、真言智山学コース卒。真言宗智山派勧修院、長勝寺、薬王寺住職。八街少年院教誨師。