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Interview

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藤野で、”人間デビュー”!? 東京とは違う贅沢の先にある 新しい働き方

weekend farmers Web site director、藤野地域通貨よろづ屋事務局、他
土屋拓人さん

神奈川県の北西端に位置し、東京の近郊にありながら森林や湖など自然に恵まれた里山、藤野。2007年の合併で相模原市緑区となった今も、土地の魅力を知る人は皆、ここを藤野と呼ぶ特別な場所。

 学校法人シュタイナー学園があり、パーマカルチャーセンタージャパンの拠点があり、トランジション藤野の活動も活発に行われている。自立分散型の自然エネルギー利用を目指す藤野電力のミニ太陽光発電システム組立てワークショップや地域通貨『よろづや』などが様々なメディアで取り上げられている。

 例を挙げればきりがないくらい、地域循環型の先進的な暮らしが実践されているかなり面白い場所として注目を集めています。
 そんな、藤野を象徴するようなイベントが毎年行われる『ひかり祭り』。今年も8月頭に開催され(その模様はコチラをご覧ください)、フェス好きはもとより、新しい時代の暮らし方を実践する自由な雰囲気に惹かれて集まる若者たちで賑わい、地元の人達と共に大いに盛り上がりました。今の時代、気にならずにはいられない藤野の『ひかり祭り』Webディレクターを務め、自身も藤野移住組である土屋拓人さん(通称ツッチーさん)に藤野の魅力をお聞きしました。

なによりもまず人が魅力的!
そして、やりたいことができる
自由な空気


(土屋さんのインタビュー動画はコチラ↑)

 土屋さんはいつ藤野にいらっしゃったんですか?

「2009年2月頃?真冬だったかな。子どもが小学校に上がるタイミングで都会を離れ新しい居住先を決めたいなって。東京から見ると憧れの田舎暮らしの場所がいろいろあったけど、小田嶋さん(『ひかり祭り』実行委員長、藤野電力)が先陣きって藤野に行って。

藤野って何処?聞いたことないよ。どんな所なんだろう?って調べてみたら、シュタイナーはある、パーマカルチャーもある、面白い市民活動もやっているし、自然もある。その時の自分が興味を持っていたものが全て揃っていた感じ。結構ミーハーだったかも…。こっちから東京に憧れるのと同じように、東京から見て、逆にこっちに憧れて。表参道辺りで、クレヨンハウスに行ったりすると野菜を自分で作っているとか、いろいろ書いてある本を目にしたり。まあここでいいかなって。家まで買っちゃって。

小田嶋夫婦とは15年くらいの付き合い。東京での遊び仲間の先輩夫婦。子どもも先にできてるし、いろんな意味で先輩。僕も寂しがりだから、(移住は)一人じゃ無理。いくらここが面白いって言われても。何人かここに偶然知り合いがいて。そうゆうのも心強くて。
東京は悪いとこじゃないし、仲間もいたし、ひかり祭りまではいかないけどクラブイベントもやってたし、そういう意味では東京でも十分面白かったんですけど。でも、ここの面白いのは、豊かな自然もあって、しかも東京のおいしいところもある。人とのつながりとか。
東京って意外と仲間意識が希薄のイメージがあるけれど、逆に流れ者の多い街だからこそ、結束力も強い。田舎暮らしで、もっと人と人とがつながれば、さらに面白いことが出来るんじゃないかって。それが実現できるのがここかなって。」

藤野電力が手がける独立型発電システム、“市民発電所”。現在、藤野内、7カ所で設置されている。

 具体的に藤野の面白いところってどういうところですか?

「圧倒的に人が魅力的。飽きさせない。自分は飽きっぽいんで。面白い人が集まるイベントが毎週のようにあって。朝活(藤野の様々な場所で多種多様な人が自発的に開催するいろいろなイベント)や陶器市やサニーサイドウォーク(11月に、日連地区で行われるアーティストさん達による展示、販売、ライブイベント)とか、ひかり祭りのような年一回の大きいイベントだけじゃなくて。それぞれに関わるメンバーのキャラクターも年代もばらばで。芸術の村ってこともあって、色んなアーティストさんやクリエイティブな人たちが、個性を活かして、この場所でこういうことやりたいねって企画して。どれもかなり濃い特色。でも、どれも誰がリーダーとかじゃなくて。やりたい人が自発的に、やりたいだけやっている。強制もしないし。そういうところが東京っぽいっていうか。都会の洗練された、べたべたしない関係っていうか。例えばひかり祭りやるぞっていったら集まって、終わったら解散してそれぞれの日常に戻って。

みんなフラットな平等な立ち位置。例えば町おこしにありがちな、リーダーがいて俺についてこいみたいな感じじゃない。
それにしても藤野は先輩達がすごすぎる。僕ら乗っかってるだけだもん。作ってくれた土壌に。もちろん僕らなりの魅力がきっと先輩たちから見るとあるんでしょうけど、『ツッチー達はこれが得意ならこれやりなよ』って。例えば僕なんか、東京でも人をつなげるのが得意だったから。そういう特技をどんどん活かしてくれて、ツッチーに誰々紹介してもらいな的な感じで。僕はそこからつながりが生まれればいいし。どんどんやりなよって。

もともと地元に住んでいる人達もいけいけどんどんで応援してくれる土壌がある。自分たちの地元を盛り上げてくれてうれしいって言ってくださるし。スタッフとしてイベントに関わることは少ないけど、お客さんとして来てくれる人が増えたし。
役場も応援してくれる。藤野電力のメンバーで市民発電所作ることにしても、補助金出そうかって。何か協力するよって。藤野電力は311(の東日本大震災)をきっかけに、2、3ヶ月後に立ち上がった市民グループの名前で。法人でもなんでもなくて。最初の呼びかけで4、50人集まって。オフグリットのソーラーパネルを手作りするワークショップやったらどうかなって自然発生的に広がって。

面白いことを思いつく人がいて、実践する人がいて、応援してくれる人がいて、それができる自由な空気がここにはある。」

高級ホテル最上階の
イベントの楽しさより
採りたてイチゴの美味しさ

 東京だと高級ホテルの最上階のフロアで有名DJが回すイベントがあるっていうのにワクワクして、そこに、おしゃれして行くっていうのが楽しい!みたいなのがあるじゃないですか?そういう楽しさって、こっちだとどうですか?

「楽しいっていうのが違うじゃないですか?ある意味、こっちは、さらに贅沢。採って数時間のイチゴやら生きた酵母菌や新鮮野菜を腕利きのシェフが料理してくれて、それを朝から食べられるっていうのは、最上階のパーティよりも贅沢なんじゃないのかな。価値観が変わったのかな?いや、東京にいた頃は、井の中の蛙というか。

東京に行けば世の中が広いってことを知るぞって言われるじゃないですか。でも逆で。僕は生粋の東京っ子で、ずっと東京にいたから東京しか知らなくて。こっち来たら、こんなに色んな生き方してる人がいるぞって。それは驚きましたね。

都会の最先端でやってきたけど、凄い狭い世界にいたなって、ここに来て思った。本当に色んな人がいるから。森から木から切り出して家具作っちゃう人もいるし。その達人たちには魅了されましたね。贅沢の意味を間違えていたのかな。東京にいた頃は。

ここに来て、デビュー。コミュニティデビュー?なんて言うのかな、人間デビュー!本当の意味で。
収入は減りましたけど、収入減った分、東京では見えなかったいろんなものが見えたし。」

朝活が定期的に行われているふじのアート・ヴィレッジ。この日は、『癒しマルシェ』。

 ぶっちゃけどれくらい減りました?

「東京と比べたら3分の1。問題は収入がないこと。相当理想と現実のギャップはあるんだろうけど行ったらなんとかなるんじゃないのって。でも実際には収入すごく減っちゃったから。想定外。仕事はあっても少ないし。こっちに来たら支出が減るかなっていうと意外とそうでもない。一戸建て買っちゃうと。家族がいるしね。子どもが2人。上の娘が12歳で中学1年生。下の次男が6ヶ月。やっぱ水道光熱費も東京の方が安かったし。そうとう節約は頑張ってますけどね。1年目が一番きつかったかな。
東京の仕事全部切っちゃったから。」

これからの働き方
“月3万円ビジネス”のススメ!

 東京の仕事を切ってしまったのは、どうして?

「今考えれば、なんで切っちゃったんだろうって。これから移住される人には現在の仕事もきちんと維持しつつ、段々と移行する形をお薦めします。
1年目はボランティアに近い形で、縁があって藤野観光協会さんで。そこで得た人脈のおかげでいろいろ仕事紹介してもらって。近くのNPOの生活介護事業所に勤めさせてもらって3年間。そこそこ安定して。去年そこを辞めて。そろそろ、ここらへんで自分で創職活動をやろうと。自分で仕事を創る、創職みたいなことをね。今、何人かで連携してやってて、色んなところに顔を出してて。月3万円ビジネスって呼んでいるんですけど、月に2日くらい働いて3万円程度稼げる仕事を複数持つ。副業じゃなくて複数の複業。全部が本業。やりたいことしかしないし、いいことしかしない。地域の仕事でね。

で、月3万円以上はもらわない。そこも重要で。
例えばツッチーあと2日働いたら月6万円あげるよって言われても、僕が同じようなスキルの人を見つけてくるからその人に3万円あげてくれって。それの方が長いスパンで考えたら結果、自分に回ってくる。」

 ツッチーさんが半年間創職活動した結果、生まれた具体的な月3万円ビジネスの内容。地域内で9個、地域外で1個 全部で10個の月3万円ビジネスを生むことができた。

お店からイベント、いろいろなプロジェクトまで、藤野の様々なサイトの製作を手がけているツッチーさん。

 仕事もシェアするという?

「そうそう。みんなの生存率を上げる。僕のアイディアじゃなく、『月3万円ビジネス』って本(favorite tipsのコーナーで紹介)に書いてあった。あとはトランジション藤野の仕事と経済のワーキンググループでみんなで散々話し合った結果を僕なりに解釈して喋ってる。是非、この本は若い人たちに読んでほしいな。自分のやりたい仕事がまだ見つからない人のために。自分の純粋意欲に従って創職する。その本によると、みんながやりたいことやってたら世の中回らなくなるっていうけれど、逆に、みんながやりたいことやってないから世の中上手く回らないんじゃないのって。みんながやりたいことやってれば世の中うまくいくでしょってことが書かれてる。これから月3万円の小商いをみんなで協力して増やしていければ。最初は小さな小商いでいいから。農家さんのお手伝いとか。
そういうスタイルを理解してくれる親方(雇用主)も増えてほしいですね。例えば、月2日だったら雇っても言いよっていう親方さんがいれば。その分、月約10人の雇用になるし。そうすれば適材適所で雇用が生まれて。お金も地域内で回るっていうのが健康的ですよね。
自分は、1件だけ都内の改修工事に行ってるけど、ほぼ地域内でお金をもらって、地元でお金を循環させている。そうするともっともっとぐるぐる地元で(お金が)回っていいのかなと。
今Web勉強中だから、藤野のみんなの特技をデータベース化して、みんなのハローワークを作って。誰でもアクセスできて、こういう仕事は誰が得意だろうって、すぐに検索ができて、すぐ紹介できる。地域内で雇う側と雇われる側の小商いマッチングWEBサイトをみんなで作っていけたらなって。」

 今、実際、どんな仕事をしているんですか?

「近くの家具屋のアシスタントとか。テレビ番組を製作している映像ディレクターのアシスタント、ロケハン、リサーチのお手伝い。パソコンが得意なんで。近所の方に教えてくれって言われるんですよね。前に働いてた、福祉事業所からも頼まれて、月3万で契約して。それから、個人商店の経理の手伝い。そんなこんなで月3万円が最近ようやく10個集まった。2日で10個で20日間労働で月30万円くらい稼げれば都内で仕事するのと変わらない?もしかしたら、ここでの心地良い生活を考えたら、お金では換算できないそれ以上の価値があるかも。そうそう、失業のリスクも減りますよね。

一見大変そうだけど、仕事がたくさん集まっちゃえば、1個減っても1割減るだけだから。休みは月に4日程度しかとれないけど、今のところ特にストレスなく暮らしていける。生活全てに幸せを感じられる。仕事と遊びの境もなくなって。それは健全ですよ。常にひかり祭りをやっているっていうか。お金も安定してきてずっとパーティしているような感じ。今後は妻と長女を3万円ビジネスに巻き込み安定収入を確保していきたい。

でも、さらに、自分でもオリジナルの仕事を創り出したいなって。これから仕掛けて、学習塾をやりたい。寺子屋的に学年を仕切らないで。算数が苦手な子のために算数が好きになるようなワークショップを。塾みたいに毎週何曜日とかじゃなくて、場所を変えたりしながら、やっていきたいなって。そこに結構わくわくを感じてます。藤野は塾がまだまだ少ないんですよ。それから英語をはじめ色んな言語をしゃべれる人が多いんで、語学。僕はたまたま算数しかできないけどトランジション藤野っていう活動がベースにあるから、新しいワーキンググループとして教育という分野で藤野電力のように始まっていくといいな。」

本当の意味での
都会的な暮らし

「相模湖までは観光地だけど、一歩こっちに来ると、空気感が変わる。いい意味で山間部だから開発もされていない。なのに渋谷、新宿まで1時間かからない近さ。東京の影響力があって、こっちの魅力も上がる。時代的に藤野的な生活が都心の人にもより魅力的になってきていて。いい影響を与え合う相乗効果で、首都圏の贅沢な場所になっているのかな?そんな場所だから新しい洗練された暮らしが生まれるんじゃないのかな。本当の意味で都会的な暮らし。そんな場所が増えていけば。首都が進化して分散して。ミニ東京みたいな。」
Profile

weekend farmers Web site director、藤野地域通貨よろづ屋事務局、他

土屋拓人さん

weekend farmers Web site director、藤野地域通貨よろづ屋事務局、他

土屋拓人さん

1976年千葉生まれ東京育ち。学習院大学理学部数学科中退。大学在学中に起業。20歳から渋谷を拠点に活動。モデル事務所を経営しながら、渋谷の大型街頭ビジョンやストリートファッション誌、クラブ、Webなどを連動させた広告宣伝戦略などを仕掛ける。
10年経営していた会社を休業。2009年、藤野に移住。移住してすぐにトランジション・タウンという市民運動に参加。藤野観光協会や、地域のNPO法人で働きながら地域通貨や藤野電力を中心とした地域おこし活動を展開。6年間で培った地域のネットワークを活かし、2015年1月から“月3万円ビジネスマン”を目指して独立。現在、月3万円ビジネスに賛同してくれた仲間達と共に創職活動中。

TAKUTO TUCHIYA's
FAVORITE TIPS

BOOK

『月3万円ビジネス- 非電化・ローカル化・分かち合いで愉しく稼ぐ方法』

藤村靖之 著

若い人たちに読んでほしい!著者は非電化工房の主催者、藤村靖之さん。「真の豊かさを実現するための仕事の在り方」のメソッドを『月3万円ビジネス』としてルール化し紹介。その後も講演会やワークショップなどで、その考え方を広める活動を進めている。

BOOK

『本当の仕事』

榎本英剛 著

著者の榎本さんは、コーアクティブ・コーチングを日本で広めた方であり、イギリスのトットネスで生まれたトランジション・タウンムーブメントを藤野に紹介した人。この本もとても勇気づけられる。創職のことや、自分の純粋意欲に従って、みんながやりたいことやってれば世の中うまくいくでしょってことが書かれてます!

MOVIE

『地球交響曲』

友人のバーテンダーに教えてもらって。自分でも自主上映を渋谷でやってて。自主上映でしか観れない映画。第一番から八番まである。どれを見ても非常に素晴らしい。おすすめ。色んな人に見てほしいな。ガイアシンフォニー。