Quest for quality life through traveling around the world.

Interview

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岩手県遠野在住 地域おこしの仕掛け人が語る これからの豊かさ

合同会社パラミタ
林篤志さん

都会の大人の学び舎として人気を博す『自由大学』の立ち上げ、高知県土佐山を拠点としたプロジェクト『土佐山アカデミー』の発足・運営など、“これからの豊かさ”を求め数々のソーシャルイノベーションを実現してきた、地域おこし界の若き貴公子、林篤志さん。
ご本人には、地域活性化とかいう意識はなく、とにかく自身が“おもしろそう”と感じることを追いかけ、ここまでやってきたとのこと。
これまでのノウハウを活かし、さらなる全国的なプロジェクトに取り組み始めた林さん。
現住、お住まいの岩手県遠野市のご自宅をお伺いして、“これからの豊かな働き方・暮らし方”についてお聞きしてきました。

 

教育、食…、そして地域。
興味のあることを
追いかけ、たどり着いた今の仕事

現在の地域プロデューサー的お仕事に就かれる以前は、どのような仕事をされていたのですか?

「東京でシステムエンジニアとして株式市場や交通などのシステムに関わる仕事に携わっていて、社会のインフラを支えるやり甲斐は感じていたのですが。

まわりのみんなが根っからのコンピューター好きで、彼らと同じ情熱で仕事するのは無理だなと。自分は他にやるべきことがあると感じてしまい。

会社員をやりながら、何か他にやりたいと思い始めたんですね。

そこで考えたところ、“教育”かなと。教育と言っても、すごく広い意味で捉えた教育で。

自分の人生を振り返ると絶妙なタイミングで重要な出会いをしてきて。それを教育というくくりにしていいのか解らないですけど、人との出会いはすごく大事だと思って。

いろんな立場の人に会って学びを得るような場を作りたいと思うようになって。

そこで、セミナーとかワークショップを自分でやってみようと。でも、そんなの世の中にいっぱいある。じゃあ、他にないことをやろうと。

一般の人が普通の生活では、まず出会わないような人を呼んで、その人の経験談を聞いて学びを得る場を作ろうと。

例えば、ホームレスのおっちゃんとか、ヤクザの組長とか、殺人の前科がある人とか。“過去前例のない異業種講演会”みたいな、イベント名で(笑)。

1年間やってみて、キワに寄りすぎたことに気づいたんですよ(笑)。

もっと普通の人でも、どんなことでも学問になるなと思って。何らかのスキルをもった方を講師として学びの場を開くことを廃校を使って出来たらいいなと思って。

廃校を調べていたら、『世田谷もの作り学校』に出会って。『スクーリング・パッド』という取り組みをされていた現自由大学の学長、黒崎輝男さんと出会い、意気投合して自由大学を立ち上げることになったんですね。

僕自身、本格的に、プロジェクトを立ち上げるのは初めてだったんですけれど。いろいろ学ばせていただいて。

1年ぐらいでしたが、そこで人に大きな影響を与えることの出来る教育の普遍的な意義を実感しました。

教育の次は、何だろう?何にアプローチしようと考えた時に、“食”だなと。

新しく会社を立ち上げて、在来種、固定種の農業のプロジェクトや、各地に興っているオーガニック農業のムーブメントを広げていく取り組みに3年ぐらい携わりました。

その仕事で、日本中を回って。その時、遠野にも初めて来まして。

遠野みたいな本当に辺境の土地に足を踏み入れ、地元のコミュニティに入り込んだ初体験だったんですね。

その時に純粋に面白いなって思って。

地方で、お会いする方々は農業、畜産業、漁業、林業…、本当にいろんなことが出来る人達ばかり。

お仕事だけでなく日々の暮らしに関しても昔ながらのいろんな技に長けている。でもこの人達がいなくなったら、地域に残された技術や埋もれた地域資源が使われないまま、なくなってしまう。

一方で、東京には、デザインやWeb制作といったクリエイティブなことや、PRやマーケティングのようなビジネス的な様々な職能を持った人達がたくさんいるのだけれど、彼らは東京を拠点に活動していて、僕が行ったような地方には全く関わっていないわけなんですよね。

これは、お互いをうまくマッチングさせれば、地域の課題を、いい形で解決しながら、新しいものを生み出せるんじゃないかと思いつきまして。

今でもそうですけど、地域活性をしたいとか、地域おこしをしたいという感覚は全くなくて。何か面白いことができそうだなと。

何かしらのスキルを持った都会の人間を、地方の現場に送り込んで地元の人達や地域にあるものを生かして新しいプロジェクトや価値を生み出していく、導線や受け皿を作りたいなと。

そういう相互関係というか、教えたり、学びあったりしながら、その中で新しいものを生み出していくことができる場を作れないかと、元々の農業プロジェクトも進めながら、行動し始めたのが2009年ぐらいです。」

土地の歴史にぴったりはまった
『土佐山アカデミー』の取り組み

「その時、アカデミーって名前は決まってたんですけど、さて、どこでやろうかと、全国各地、探していたんですよね。

遠野も候補地だったし、能登半島のすずという所や兵庫県の加西市、東京都の新島などの候補地が幾つかあって。

たまたま高知県庁の方が土佐山という場所をご紹介くださって。2010年の9月に初めて訪れて。」

候補地の選択基準はどんなものだったのですか?

「アカデミーの学びのコンセプトは、“人間が自然の一部として、どうやって持続的に暮らしていけるかということを、学んで実践する”だったので。

やっぱり、人と自然が近い場所ですよね。

地方都市の商店街再生という話ではなくて、中山間地域や農村や漁村、人と自然がギリギリの境界線を保ちながら暮らしているような場所。

かつ、その地域の風習や、技術的なものが辛うじて残っている場所というのが、選定の基準でした。

土佐山に行って、直感で、ここでやりたいと思って。東京と行き来しながら半年かけてプランを検討して。

2011年の年明けには高知市と一緒に土佐山でやっていこうということになってたんですね。

で、東日本大震災が起きて。

震災当日は、視察で土佐山にいたんですけど。

東京に帰って来て、街全体が暗い。当時、渋谷に住んでいたんですけど、渋谷も暗くて。

東京を拠点に様々な地域をプロデュースする形で関わる働き方をイメージしていたんですけど。

震災が起きたことによって、とりあえず、土佐山の現場に入って始めてしまおうという気持ちになったんですよね。

2011年の4月には土佐山に拠点を移して、準備を始め、その年の7月に当時の創業メンバーも集まって、本格的にスタートしました。」

↑『土佐山アカデミー』のWebサイト。

「『土佐山アカデミー』は2016年で6年目に入り、のべ6千人ぐらいの方に来ていただいて、そこから30組ぐらいの方が移住して来ました。

自分で事業を興したり、自ら仕事を作リ出してる人もたくさんいます。地元の方と結婚した人もいますし、お子さんが生まれた人もいます。

それは結構感慨深いというか。

僕らが考えられる未来なんて限られているし、未来のディティールまでデザインするなんて無理だと思っていて。

『土佐山アカデミー』が目指すビジョンを掲げ、こんな環境があるということを可視化して、どのように土佐山という地域に入っていけばいいかの導線を引く。

最初の環境を整えることが一番肝心なところでして。

元々住んでる人がいて、文化があって、そこにルートが出来て、新しい人がやって来て、良くも悪くもいろんな摩擦を起こしながら、新しいものを作っていく。

自然発生的というか。

自然の生き物と一緒で環境とか条件が揃えば、自然とそこに生きる人達の形が出来上がってきて、多様性も出てくる。自然に出来あがったスタイルは強いし。

そういう場作りをしたいなと思って仕事をしている感じですね。

その上で、やっぱり、そこの土地の歴史は無視出来ないですね。

その延長線上に何かを作るしかない。

もちろん、いろんな新しい取り組みがあっていいのですが、その根幹を成す軸となるのはその土地が持っているものであって。

例えば、土佐山であれば自由民権運動発祥の地って言われてるんですよ。

高知市の中央公園の石碑には、“自由は土佐の山間より出づ”と彫られているんですね。

当時、自由民権運動の活動をしていた人達が高知県内に3千人もいたらしく。たいまつを焚いて、表向きはイノシシ猟に行くという体で、土佐山村に集まり決起集会を開いていたという歴史があるんです。

彼らが勉強会を開いていた山小屋が残っていたり、夜学会といって地域の青年が夜な夜な集まり酒を飲みながら政治をどうするか論議し合った場があったり。

昭和に入ってからも村自体が独自の教育コンセプトを貫いていて。

“社学一体”。

簡単に言えば、教育は、特定の人のために、限られた場所で行われるものではなくて、地域の中で世代や立場を超えて互いに教え学び合えるものであるのが本来のあり方だと。

村自体で地域の人を育てることをやっていて。ドイツやスイスなど村人達をヨーロッパ研修に派遣したりしていたんですよね。

基本的には社学一体という教育をベースにずっとやってきた土地で。

たまたま僕達もその歴史の文脈の上に乗っかっちゃったという感じで。

だから、第1弾のアカデミーの場を作る上ですごくやりやすかったと思います。

そういったものがないところだったら、理解してもらうのに時間がかかったと思います。」

もらうものじゃない!探すものじゃない!
仕事は、自ら創り出すもの!
地域のヤル気をサポートする

「『土佐山アカデミー』では、ワークショップなどの催しをしているうちに、外から人が集まり、そこから、実際に住んで何か始めたいという人も出てきた。

でも、そういった人達が活動するための拠点がないと。

いきなり来ても家を借りることが出来ないから、僕達が地元の人達からお借りして、リノベーションしてシェアハウスとして提供するという仕組みを作ったのが2012年。それが『土佐山ワークステイ』という取り組みで。

場所がない、借りられない、人を知らないって時に。外の人と地元の人を繋ぎ合わせるための信用担保機関みたいな感じで間に入ってあげて。

僕達自身も最初は、なかなか家を借してもらえなかったんですよ。

草刈りや畑作業などの地域の仕事を手伝い、行事や集まりに顔を出すことを積み重ねつつ、自分達の活動を知ってもらって、地元の人との信頼関係を築いていくうちに、ようやく空き家を提供してもらえたり、ちょっとずつ出来ることが増えていったんですよね。

でも新しく入ってくる人は、ゼロから積み上げていかなければならないのが地方の常で。

そこで、家を借りるとか、とりあえず何かを始めるにあたってのベースの部分をスキップしてあげる。

一番初めのハードルを極力減らそうというのが『土佐山ワークステイ』の目的なんですよ。

土佐山みたいな辺境の地にわざわざやって来る人は、ゆったり暮らしたいなんて思ってなくて、むしろ、何かを地方でやりたいと思ってるわけですよ。

にも関わらず、本当に何か出来る状態になるまでに時間がかかりすぎる。

地域になじんで受け入れてもらえるまで半年とか1年間かかってしまうなんてことになっちゃうんですね。

だからスキップ出来る部分は、サービスとして提供出来ればいいじゃないかと。」

「そこから、地方で起業する人のために特化したプログラムとして2014年から始まったのが『エッジキャンプ』。

地方には仕事がないと決まり文句のように言われるけれど、厳密には、仕事がないんじゃなくて、雇用が少ない。

仕事の種とかネタはいっぱいあるはずなんです。

どんな場所だって、そこにあるものを活用して理想の働き方、暮らし方ができる。

それには、自分で仕事を作れるスキルを身につけることが大事で、そのノウハウや技術を提供するのが『エッジキャンプ』なんです。

2014年は、募集10人の枠に対して40人の申し込みがあったんですが、30代の独身女性が圧倒的に多い。

フットワークが軽くて、男の人より強い!(笑)

ほとんどの方が高知や土佐山への移住を希望しているというよりも、地方であれば場所はどこでもよいと思っていて、自分の理想の働き方、暮らし方を実現したいと思っている。

ただ、どのようにスタートしていいか分からない。

自分1人で見知らぬ土地に入って行くのはリスクもあって不安ですし。

エッジキャンプでは、そういう人達を6ヶ月間、同じ場所に集めてノウハウを提供する。

同じ境遇の仲間達もいて、土佐山との関係性を徐々に築きながら、各々の理想の暮らし方にチャレンジしていく。

結果、参加者の完全定住率は約6割です。」

地域を盛り上げる動きを全国規模に!
林さんの新たなるチャレンジ

『ローカルベンチャースクール』は、
“地域で起業したい”人の
地域おこし協力隊


『土佐山アカデミー』で得たノウハウを全国的に展開し広げていくことをお考えとか?

「この2年半ぐらい、『土佐山アカデミー』に関わり、土佐山で暮らし、場作りをやってきたのですが、土佐山の1拠点だけでやってることの限界をすごく感じていて。

土佐山アカデミーのことや、地方へ人が動いていること自体、僕たちの活動や地方に興味のある人には知られても、社会全体の中では興味も持たれず、身近なものになってないと感じるんですね。

その原因は、各地域のプレーヤーが点で活動してしまっていることが非常に大きい。

それぞれ独自のビジョンとアプローチで、場が出来て、実際に人が動いているのだけれども、社会全体のインフラにはなっていない。

個別サービスみたいになってしまっているので。

共通のコンセンサスをとって全国各地で連携して、全体の最適な仕組み作りをしたいと動いてきたのがこの1年ぐらいですね。

今、動いてる『ローカルベンチャースクール』では、土佐山のようなプログラムを横展開するために、総務省がやっている『地域おこし協力隊』という制度を、新しい枠組みに作り変えていくことをやってます。

地方で起業するためのプラットフォームとしてうまく活用しようと。

つまり、“起業に特化した”『地域おこし協力隊』制度っていうのを作ろうと思ってるんですね。

現在、全国に派遣されている現役隊員は1千5百人いて、それを3千とか4千に増やす計画があるようなのですが。

1隊員に対して年間4百万円が支給され、うち2百万円が給料なんですよ。

残りの2百万は活動費として自由に使えるというルールになっていて。

経験もスキルもない若者が行って、なかなかうまくいかないケースもあって。自治体側にノウハウがないのもあると思うのですが。

もう一つは、逆のパターンのミスマッチングも起きていて。

これは特別交付税という自治体負担がゼロの制度で、かなりの額のお金が落ちるので、自治体もとりあえず手を挙げてみるようなところもあって。

そこにやる気のある優秀な人が来ても、自治体の雑用を押し付けられて飼い殺しになっちゃうケースもある。

全国各地でミスマッチングが起きていて、それを解消し、裾野を広げて数を増やしていかなければいけない。

年間400万円、しかも3年間ももらえるのは、生ぬるすぎるくらい優遇された支援なんですよ。

それで僕達が新しく提案しているのが、“起業に特化した”地域おこし制度。

何となくミッションを与えて3年間過ごさせて、その後の保証はないから自立してくださいというのが今までの状況なんですけれど、初めから具体的にやりたい事業のビジョンを持っている人達を選抜して入れて、とにかく起業させる。

そういう人材を受け入れたい自治体のみをちゃんと抽出してマッチングさせる。

ところが、自治体の準職員の位置付けになるので、3年後の独立が求められてるのに、副業がNGとか。

車も割り当てられるんだけど、行政の車だから就業時間以外使用NGだったり。

そういった矛盾をなくして、本当に起業したい能力ある人材を、受け入れ態勢を万全にして移住させていく。

起業家って言っても、大きなビジネスもあれば、スモールビジネスもあっていいと思うんですね。

それがどんどん地域に生まれるような仕掛けを作っていきましょうということで動いてます。

東京で適する人材をしっかりリクルーティングする3か月準備クラスが用意されていて。

これは制度をしっかり理解するという意味と、OBの方の事例を見て回りながら、本当に自分は『地域おこし協力隊』でやりたいことが出来るのか、どういったアプローチが可能なのかを検討する期間でもあるんですね。

例えば、徳島の藍染が有名な生産地に『地域おこし協力隊』で入って、藍染をブランド立ち上げて、徳島とニューヨークでスタジオをオープンさせたOBとか、色んなメンツの取り組みを実際見てもらいます。

自治体とのコミュニケーションを取れる場も用意されています。

実際に現地に行って、地域のこともわかって、起業プランも出来てきて。

でも、それですんなり起業できるとは限らないので、6ヶ月間かけて、エッジキャンプの様な形でインキュベーションするプログラムも作る。

自治体の方に、起業家育成から始める地域おこしをやりませんかと呼びかけていく新しい枠組みを作っているんですね。」

↑『ローカルベンチャースクール』の概要イメージ図。

↑『ローカルベンチャースクール』参加者の移住、起業の流れ。

遠野でテーマ設定型の起業支援
『遠野ローカルベンチャースクール』


「まず、遠野でその枠組みを本格的に導入しようとしているんですけども。

優秀な人材を集めて、遠野で既に新しい取り組みを始めているプレイヤーの元にどんどん送り込む。街の人事部的なものを作ろうと動いてます。

2016年、起業を前提とした隊員を多くて15名くらい入れるんですよ。

この人たちをうまくマネージメントする組織を作るんですね。

仕組みとしては、2百万の活動費から百万をマネージメントのフィーとして頂き、例えば、10人集まったら1千万を原資に彼らのインキュベーションのプログラムを組んだり、空き家を紹介する人件費のコストにあて、回していくことをやっていく。

遠野の場合だと、1つはビールメーカーのKIRINさんと一緒にホップ農家と醸造家を支援していくのと、ビアツーリズムのツーリズム事業の専門家を育てていく。

テーマ設定型の起業支援ですよね。

一方で、自分のテーマで起業したいという人達も受け入れていきたい。例えば、高齢で引退したブルーべリー農園の事業継承型もあれば、馬搬(伝統的な馬で木を運び出す、林業の技術)で林業に取り組んでいる人の所に入って起業してもらうとか。

一気に人を入れて、遠野に起業家の群れを作ることをやろうとしてるんですね。

今、遠野には非常に面白いプレイヤーや要素が散らばっているんですけど、そこに接点がないんですね。

新たな起業家の卵達を入れることで、その隙間を埋める役割も担ってもらい、遠野全体のリソースをうまく循環させることも狙って仕掛けていきたいなと思っています。

さらに幾つかの大手企業が共同出資してマッチングファンドを作り、『地域おこし協力隊』から集める原資だけではなく、もう少し強固な資金を確保して、個々の事業育成をしっかりしていくことを目指しています。

それから企業が継続的に地域と関わるためのスキームをしっかり作っていくこと。

これをやっていくことによって企業の人材育成や新規事業開発に貢献できると思っています。

例えば、遠野の起業支援マネージメントへの出向とか。生々しい現場を経験することで自社の人材育成に役立てませんかと。

新規事業開発に関しては、例えば、起業を望む有望なアイディアを持った優秀な人材に、ここのマッチングファンドの資金を使って起業させ、うまくいけば、自社のビジネスに吸収するとか、タイアップしてやっていくとか。

ここにある地域のリソースを活用して、外から来るフットワークの軽い人材が活躍していく場を作り、大手企業では難しいビジネスシードを見つけるスキームを作っていこうとしています。」

新しい時代の公共の場を作る
"village(ヴィレッジ)構想”


「今、ハード面では、全国の廃校を同時多発的にリノベーションしてレジデンスにするということを考えていて。

廃校は、全国で4千校を超えているんですね。年4百校のペースで増加していて。

そこを、インキュベーションに活用する施設として使ったり、様々な業種の人達がサテライトオフィスとして働ける場所やレジデンスとして暮らせる場所にしたり、地域の人達も利用したいと思うような公共的役割を担う空間にしたいと思っています。

これも、まだ仮なのですが“ヴィレッジ構想”として、いくつかの企業と動いて作ろうとしています。」

これからの豊かさ
多様な働き方や暮らし方が
許容される世の中づくり

これから、より地方が面白くなっていきそうですね!

「僕は田舎が好きで東京が嫌いかというと、そんなこと全くなくて。

東京は面白いと今でも思ってますし、絶対に無視できない存在だと思うんですよね。

では、なぜ地方かというと。

その理由の1つは東京や都市では出来ないようなダイナミックなことができる。

もはや社会実験と言えるような規模のことが出来る。

例えば、東京で広大な土地を買おうとか、使おうとかすると、とんでもないお金がかかりますけれど、地方だとうまくすればタダ同然で手に入ったりするわけですよね。

極端な例かもしれませんが、国会議員になるのは大変だし、議席を1、2席とったところで果たして国政を変えられるかどうか…。

でも地方の議員だったら、立候補者数が足りなくて当選しちゃったり、数百票集めれば当選出来ちゃう。

若い世代が本当に自分たちが理想と思うような国作りというか、理想郷を作りたいのであれば、地方で始めることは難しくないと思うんですよ。ミニマムでスピーディに出来ると思うので。

それから、新しいことができるし、活躍の場が多い。

人が少なく、余白があり余ってるし、足りないものだらけなので、東京では当たり前で埋もれてしまうものも、地方だと希少価値が高く独占的に展開出来る強みがある。

例えば、土佐山のエッジキャンプ参加者の一人が立ち上げたのがマッサージ屋なんですよね。

そんなの都会だったら大手もいるし競争相手がいっぱいいるじゃないですか。

でも土佐山の村には、老人ばっかりでマッサージをして欲しい人はたくさんいるのに、マッサージ師はいないんですよね。

しかも移動が不自由な人もいるから、訪問マッサージで回るんですが、独占なんです。村人950人のマーケットを。

ここ遠野の場合、いいカフェがなくて、センスのいいお店をオープンすれば間違いなく繁盛しそう。東京でカフェなんて出すだけで莫大なコストがかかってしまうけれど。

地方には、求められる役割だとか、チャンスの場が非常に多いのを感じますよね。

もう1つは、より自由な働き方、暮らし方が出来ると思うんですよね。

都心は人口が集中してて、満員電車1つとっても超ストレスフルだし。

本当にみんながそこで暮らし働くべきなのかすごく疑問に感じる。

東京で意志を持ち意義を感じて活動してる人には、とても楽しい場所だと思うんですけれど。

面白い人達が周りにいて、すぐに会えて、すぐに物事が進むいい街だとは思います。

でも、もっと、自由に働いたり、自分の暮らしを体現出来る選択肢があるんじゃないかと。

それを実現する場所は、地方だろうと。生きていくための資源も生活の場に近いところにありますし。

水道が止まっても川に水は流れてる。土もあって作物を育てられる。

東京では、焚き火すら出来ないじゃないですか。でもここであれば誰にも怒られないし。

精神的に豊かな生活が送れるのは間違いなく地方だと思うんですよね。」

↑岩手県遠野の森深い山間地域の広大な土地に佇む、林さんのご自宅。

↑安価で新鮮な食材がそろう、近所の道の駅。

「地方に興味を持つ人が増えてきて、実際に地方への動きも活発になってきていると思うのですが、その考え方は、まだ世の中の主流にはなっていないと思うんですね。

例えば、僕のサラリーマン時代の同僚と、そんな話が出るかと言ったら、全く出ない。それが世の中の大多数だと思っていて。未だに社会が全然変わっていないと思うんですよ。

一部の人は、すごい熱狂してる。でも周りを見渡したら、あれ?みたいな。

だから僕達が切り拓いてきたこの現状を、もっと一般的に知ってもらいたい。“あ、こんな暮らし方ってあるんだ”とか、“こんな働き方あるんだ”ってことを。

そのための土台が今はないわけですよね。

結構、アクロバティックにいろんな人たちがいろんなことを偶発的にやっていて。

もっとより多くの人達に知ってもらって、関心を持った人達が実際に動けるような社会インフラを作りたいと思っていて。

そういった中で、大手企業の社員がどのように働けるようになるかというのが、これからのわかりやすい市場だと思います。

僕が想像する未来は、大手企業が東京本社に社員を何千人、何万人抱えなくても、各地方に分散させて、リモートワークをちゃんとやれるようになっている世界。

本社への出勤は月に2回ぐらいでいいと思うんですよね。

実はそっちの方が全体コストを落とせると思っていて。

例えば、1時間以上かけて乗る定期代を払わなくていいし、家賃補助もしなくていいし。地方での生活コストを考えたら給与をちょっと下げることも可能かもしれない。

働き方や暮らし方の多様性を社会が許容できるような文化が育まれ、それをしっかり支えるシステムが確立されるような世の中にしていきたいですね。」

↑アパレルメーカー『URBAN RESEARCH』が手がけるエシカルファッション『かぐれ』のブランドプランナーである奥様、渡辺敦子さん、娘さん、愛犬のはなちゃんとご自宅の前で。

林さんとお話していると、地方の寂れた場所というイメージが払拭され、地方で暮らし働くことが楽しく魅力的に感じられてくるから不思議です。
今後の『ローカルベンチャースクール』の取り組みから、どんな成果が生まれてくるのか期待が膨らみます。
林さんのインタビューから、地方に活路を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
『ローカルベンチャースクール』について、さらにご興味のある方は、
こちら→http://localventure.jp/をご覧ください。

hayasshisan 7
Profile

合同会社パラミタ

林篤志さん

合同会社パラミタ

林篤志さん

愛知県出身。
2009年、自由大学の立ち上げに携わる。
2011年から高知県、高知市土佐山にて土佐山アカデミーを立ち上げ、Co-Founder、Producerを務める。
2014年から東北オープンアカデミー実行委員に。
合同会社paramita代表。

Atsushi Hayashi's
FAVORITE TIPS

BOOK

『社会学入門-人間と社会の未来-』
見田宗介 著

社会とは一体、何だろうってことがロジカルに、でもすごく詩的な気持ちい文章で書かれているんですよね。人と物の関係性の集積みたいなものが社会だと僕は思っていて。シンプルだけど、楽しいものにしたいなと思って。自分の取り組みやプロジェクトを考える時に、教科書的に何度も何度も読んでる本です。