
Interview
きちんと生活できる場所を求めて長野へ まず移住ありきのライフスタイル転換
「地元の鳥取に居た頃からファッションの仕事に就きたいと思っていて、高校卒業後、東京の専門学校に入って。
それ以来、ずっと東京暮らしだったのですが…。やっぱり“住む場所”ではないのかなと思って。
“ちゃんと暮らしてる”感じがしないというか。
東京にいると、仕事が優先になってしまうじゃないですか。
通勤時間にだいたい1時間弱くらいかかって、帰りは毎日、終電くらい。
会食とかも多いから、終電に間に合わずタクシー帰りの日もあって。
家に着くのが、深夜とか。寝に帰る感じですよね。
確かに目標であったファッションの仕事に就けて、第一線で活躍出来ていることはありがたいのですけれど、ふと我に返って、もっと日々の生活をきちんと出来る様になりたいなと思うようになって。
住環境を整えて、暮らしを豊かにしたほうがいいと感じて。
東京から離れて、快適な暮らし方を探そうと。」
長野を移住先に選んだ理由は?
「東京で知り合った方が移住をして、そこへ何度か遊びに来ているうちに、この辺りが気に入って。
直感的に“いいな!”と感じる場所ってあるじゃないですか。
自然の豊かさとか、空気感とか。食べ物も美味しいし。
意外と東京から近いなと思って。」
先に長野に住むって決めてから、仕事や生活を変えていったんですね?
「そうですね。」
それはいつぐらいですか?
「2011年ですかね?会社を辞めて、アメリカで3ヶ月、語学留学をして。
友達が居る所がいいかなとロサンゼルスに。
帰国する直前に東日本大震災が起きて。
本当は帰国してすぐ長野に引っ越そうと思っていたんですけど、震災直後で落ち着くまで実家の鳥取に帰って、そこから引っ越しました。」
長野の住環境はどうですか?
「ちゃんと四季を感じて、生活できてる感じですね。」
ライフサイクルはどんな感じですか?
「9時から10時の間に起きて、朝ご飯を食べて、仕事して。」
仕事のスタイルは変わりました?
「会社員とは全然違いますよね。
今は、フリーなので自分のペースで仕事が出来るようになりました。
仕事の内容的には普通のファッションプレスと一緒ですけれど。
デスクワークとか全部、長野でやっています。
基本、外出する時は陽のあるうちに全部済ませて。陽が沈むまでには家に帰るみたいな。
街灯がなくて真っ暗になるから夜もそんなに出かけないし。
日によりますが、たいてい19時くらいには晩ご御飯を作って食べてます。
早く帰るので時間に余裕が出来て。
前は、仕事や人と会ってる時間以外は、本当に寝てるだけだったので、1人で過ごせる時間が増えたというか。
本を読んだり、ネットで調べものをしたり、映画を観たり。
料理も休日しか作れなかったけれど、今は長野にいるときは基本作っています。
気持ちにも余裕が出来ましたね。」
仕事をするにあたって、長野で離れててデメリットってないんですか?
「打ち合わせなど、クライアントさんありきのスケジュールは、東京に行く時にまとめて入れるんですけれど。
カタログの撮影などは、撮影のスケジュール次第なのでイレギュラーな感じになりますが、デメリットはあまりないですかね。」
仕事上こっちに来て良かったことはありますか?
「フリーになったってことで仕事のやり方が変わったので、長野へ移住してどうこうということはないですね。
フリーのメリットって依頼がきて、やる、やらないを自分の裁量で決めることが出来る。
ライターさんやスタイリストさんとかフリーランスの方は皆さんそうだと思うんですけど。
ありがたいことに、仕事を依頼してくださる方に恵まれています。」
毎週どれくらい長野にいるんですか?
「半々くらいですね。週の半分は東京にいます。」
「今の家は、紹介してくれた不動産屋さんが東京からの移住組みの方で。
分譲なんだけど、ずっと決まらない物件があるからどうかって。
平屋の1LDKで別荘を探してる人には狭いみたいで。
前の家は佐久という場所にあったんですが広過ぎて、冬がとても寒かったので。
東京に行く時は、水道の栓を全部閉めるんですよね。
元栓を閉めないと水道管が凍っちゃうんですよ。
1年目は、要領がわからず色々なものを凍らせてしまい大変でした。
その度に水道屋さんを呼んで“どうすればいいんですか?”って泣きついてました。
トイレは便座に保温機能が必ずついていて、常に電源を入れておかないと便器が凍ってしまうんですよ。
最初、それを知らなくて、何日か家を空けるときに省エネと思って切ってたんですよ。
そうしたら、便器が凍って(笑)。
凍結しないようにしているので便座は常に温かくしておいてくださいと注意されて。
今は、冬場はつけっ放しにしてます。
シャワーのホースもお風呂を出る時に、よく振って中の水を出さないと凍っちゃうんですよ。
寝てる間に。
そしたら、お湯につけておいてくださいって言われて。
あと、洗濯機も毎回元栓を閉めないとダメ。
使うときだけ栓を開けて水を出すみたいな。
キッチンの流しも、コップに水を入れたまま放置したら凍ってしまうので全部水を溜めないようにしなきゃいけないんです。
部屋の花瓶の水も、毎日、家に居て水を入れ替えれば大丈夫ですけれど、3日家を空けると一気に凍る。」
夏は涼しいんですよね?
「夏は快適です。
でも今住んでいる軽井沢は、雨が降ると湿気がすごくて。
結露もだし、カビもすぐ湧くし。じめーって感じです。
木が多いのもあると思います。木って水分含むじゃないですか。
あと地形的にも湿地帯らしいんですよ。軽井沢って。」
この辺の家賃って平均いくらぐらいなんですか?
「賃貸が少ないから相場はわかんないんですよね。
東京よりはもちろん安いです。」
長野に引っ越されて東京の友達の反応はどうですか?
「以前より羨ましがられることが多くなりましたね。
最初の頃は、どちらかというと“なんで?”って思われてましたけど。
最近、周りも結婚して、子どもを授かって、地方に引っ越したいって人が増えてきましたね。
家を買うとなった時に、東京にずっと住むか、地方に行くかを考えてる人は多いと思います。
出産をきっかけに実家の方に引っ越そうかなって人もいます。」
みなさん、地方に行くのにどうやって稼ごうか、悩まれませんか?
「多分、実家に帰る分には、とりあえずなんとかなるって思ってるんじゃないですかね。
地元で店やればいいやとか、何か始めればいいやとか。
一般的には会社を辞めるのはハードルが高いじゃないですか。
私の周りにはアパレル系の人達が多いので、フットワークの軽い人が多いかもしれないですね。
家で仕事が出来るデザイナーやグラフィック系の方も、地方に行くケースが増えていますね。
Webのデザインをしているグラフィック系の友達も今、長野県の上田市に引っ越して来て。」
そういったオシャレ系の方が集まる地元のコミュニティがあるんですか?
「特に長野で移住者コミュニティのようなものがあるわけではないです。
東京の友達に、“長野に住んでいる知り合いがいる”って紹介されることが多いですね。
上田に引っ越して来た彼女は東京のカメラマンの友達に紹介してもらったんですよ。」
地元で盛り上がっているイベントとかあるんですか?
「アウトドアフェスとかあるみたいですが、私が毎年行っているのは『まつもとクラフト』とい
う手づくりの作家さんが集まるイベントが毎年あって。
パン屋さんとか、カフェとか、木工作家さんとか、焼き物をやってる人とか、鋳物の何かを作ってる人とかがブースを出して出展するイベントなんですけど。
手づくりの達人達の展示会みたいな。
すごい有名なんですけど、それに行くぐらいですかね。
音楽フェスという感じではないんですけれど。」
友達のコミュニティ拠点は東京なんですね?
そうすると、遊ぶのは東京のほうが楽しいのではないですか?
「別にそんなに。
仲良い友達は東京の方が多いですけれど。
だからと言って東京を暮らしの場として優先することはないですね。」
東京の友達も長野に遊びに来たりします?
「結構来ます。
ゴールデンウィーク明けぐらいから10月ぐらいの時期は結構来てくれます。
でも雪が降る時期になると、来るのをオススメしないですね。寒いですし、色々大変なので。」
ファッションに対するこだわりとかは変りました?
「職業的に、展示会で買うので、相変わらず服は買ってます。
ただ若い時に比べ、欲しいものも着るものも変わってきたので。
仕事柄色々着ますけど、結局、着心地がいいので、素材がいいものを選ぶようになってきていますね。
トレンドの物も好きだけど、長く着られるものの方がいいなって思いますね。
多分住む場所が変わってというより、年齢的なことの方が大きいかもしれません。」
「ファッションの仕事を離れ、完全に長野にいるようになったら服は買わないですね。
いらないと思います。
長野だけだと10着ぐらいあればいいかなと思いますね。」
そんなライフスタイルになったら、それは自分のスタイル的には違うなと思いますか?
それとも、そうなったらそれでもいい?
「多分、いい悪いというよりは、自然にそうなっちゃうと思います。
ノースフェイスなど、ちょっとアウトドアよりのアイテムが多くなる。靴とかも。
外を歩き回ることが東京と比べて少ないから、まずコートなどのアウターを着ることが少ないですよね。
車だと座るからシワになるのでショート丈。冬は雪が降るからナイロンっぽい方がいいなとか。
ゴアテックスとかであれば全然いいので。そういうのって丈夫だから何年も着れるじゃないですか。
そんなに買い換えないし。ダウン着ればそれでいいやって。」
ノームコアの流れやアウトドアスタイルのブームで東京のファッションもそっち寄りになっ
てきてますか?
「アウトドアよりのブランドは増えましたね。」
将来的には何をしていきたいですか?今後もファッションに関わる仕事はしたいなと?
「最初は長野でカレー屋やろうと思ってたんですよ。」
え?カレー屋?
「カレーって私もそうですけど、みんな大好きじゃないですか?
長野って野菜と米と肉と全部あるから、水も美味しいし。
じゃあ長野でカレー屋を開くと面白いんじゃないかなと思って。
お母さんのカレーみたいな。
普通の家っぽいカレー屋さんて、この辺にあまりないんですよ。
地元の人が毎日来れる感じで、普通にシンプルなカレー屋さんが出来たら。
実現させたいとは思っているんですけど全然出来てなくて。
どっかでパンって今の仕事を全部辞めないと、出来ないかなって感じですね。
将来的に長野に永住を考えてるわけでなくて。
本当に飽きたり、この場所は違うなと思ったら、仕事は今のままで東京に戻ろうかなぐらいんに思っていたんですけど、今のところ、こっちの生活が心地良い感じですね。」
意識的というよりは、無意識に直感で動いて今の暮らしを実現されている丸山さん。
そういう感覚的な方が、脱東京の地方暮らしを優先して選んでいることにこそ注目すべきではないかと思います。
大手のファッションブランドがアパレル部門から飲食やライフスタイル雑貨への比重を高めるケースが多々見受けられます。
オシャレ業界最先端で働く丸山さんが、“長野でカレー屋さんをオープンしたい”という思いに至るのも決して意外ではなく、時代の流れなのかもしれません。
家庭的なカレー屋さん、長野でのオープン、実現された暁には是非、お邪魔させていただきたいです!
フリーランスPR
丸山理奈さん
フリーランスPR
丸山理奈さん
鳥取県出身。
広告代理店、アパレル販売を経て、 2006年、株式会社ビーズインターナショナルに入社後MILKFED.プレスを担当。
退社後、アメリカ、ロサンゼルスに留学の後、フリーランスPRとしてマルチに活動中。
BOOK
『完全版 自給自足の本』
ジョン シーモア著
引っ越してから買って読んでます。家畜を飼うにはとか、木の実の採取とか、狩猟の仕方とか、畑の開墾の方とか、かなり本格的なことが書かれている本で。自給自足は現実的には出来ないと思うんですが、庭でちょっとした作物を育てたりとかは好きだから。食べることが好きだし、料理も好きだし。参考に目を通しています。
BOOK
『ヤナの森の生活 ハワイ島の大地に生きる』ヤナ著
友達に誕生日にもらったんですけれど。ハワイ島で自給自足をしてるおばさんの本なんですけど、この人みたいになりたいという理想の暮らしが書かれていて。ハワイ島に行って住めたらいいなと思ったんですよ。この本は前から知ってて、また読み返してて。ハワイ島は特別なパワーを感じる所でいつか住めたらいいなと思っています。